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投稿日:2021.05.22 
更新日:2023.10.04 

食品工場におすすめの防虫対策!発生源ごとに適切な対策を解説

気温がどんどん高くなって、これからの季節は「食中毒に注意しなければならない…」と考える食品関連事業者様は多いことでしょう。日本国内の気候は、5月以降、高温多湿状態が続きますし、カンピロバクター、サルモネラ、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌など、細菌性食中毒への注意が欠かせません。

さらに、気温が高くなるこれからの時期は、食中毒以外にも異物混入の原因となる、害虫の発生に注意しなければいけません。人が口にする食品を製造する食品工場などでは、外部から虫が侵入しないように、さまざまな対策が行われていると思います。食品工場などで問題となる虫は、主に外部から侵入してくるものだと考えられていますが、中には工場内部で発生する虫も存在します。

そこでこの記事では、工場内部で発生する虫の防虫対策について考えていきたいと思います。
 

害虫の種類から防御策を検討する

害虫と一言にいっても様々な種類があり、害虫が好む環境や発生経路も異なります。害虫の種類と特徴について知っておくことで、防御策も見えてきます。

 

鞘翅目(ショウシ目)・・・カブトムシ、クワガタなど

昆虫界で最大のグループであり、体が堅い鞘で覆われているのが特徴です。弱った動植物(木材、畳、衣類)等を食害するものが多く、またカビを好んで食べる食菌性のものも多いため、工場へ持ち込む資材や梱包材、およびカビへの注意が必要です。  

 

鱗翅目(リンシ目)・・・チョウ、ガなど

害虫としては蛾類が主になり、食品への混入危害としては最も多くなります。飛来による侵入が多いイメージですが、工場では原料や資材に紛れて工場に侵入することの方が多いです。貯蔵食物や粉溜まりを発生源として増殖するため、搬入物や貯蔵物の管理、清掃が重要になります。  

 

双翅目(ソウシ目)・・・ハエ、カなど

ハエ、蚊類が該当し、種によって屋内発生するものと飛来侵入するものとがあります。屋内発生においては排水系を主な発生源となり、排水溝やその経路の清掃が重要です。飛来侵入は灯火誘引および腐敗臭によるものが多く、屋外のゴミ置き場などの管理に注意が必要です。  

 

網翅目(モウシ目)・・・ゴキブリなど

ゴキブリ類、カマキリ類を指します。食品や製品への混入において心理的影響が最も大きいと考えられます。人為的侵入が最も多く、一部は歩行侵入します。外部の侵入を防ぐため隙間を作らない、餌となる食べ物や生ゴミを長時間放置しないなどの注意が必要です。  

 

工場内部の虫の発生源はどこ?

冒頭でご紹介したように、異物混入の原因となる虫の侵入経路は、主に開口部から入ってくる「飛来侵入」、壁や床を伝って入ってくる「歩行侵入」、排水設備の不備や水たまりから発生する「排水系発生侵入」、衣服に付着して入ってくる「人為的な侵入」という外部から侵入。…と考えている方が多いです。しかし、工場内部にも、虫の発生源が存在しており、その部分への対策をしっかりと行わなければ、食品工場の防虫対策は不十分になってしまいます。

ここでは、工場内部に存在する、代表的な虫の発生源をご紹介しておきます。
 

①水に濡れた場所

工場内で虫が発生してしまう場所の一つ目は、排水溝やグリストラップ、浄化槽などの水に濡れている場所です。こういった水が存在する場所は、チョウバエやノミバエ、コバエなど、大量のハエが発生してしまう恐れがあります。

ハエの幼虫は、食品残渣や汚泥がエサとなり成長しますので、こういった場所を清潔に保たなければいけません。

結露が原因の水濡れにお悩みの方はこちらの記事も併せてご覧ください。
【工場の結露対策】冷蔵・冷凍庫で結露や霜が発生する原因と防止策

②原材料などの保管庫

上述の「水に濡れた場所」で虫が発生してしまう恐れがあるということは、なんとなくイメージしやすいと思います。しかし実は、製粉工場や製麺工場など、穀物などの乾燥食品を保管している保管庫でも虫が発生する恐れがあります。 保管庫などの乾燥した場所であれば「虫の心配はあまりない」と考えてしまうかもしれませんが、コクゾウムシやコクヌストモドキなどの虫は、乾燥した食品がエサとなるため、保管庫などの乾燥した環境が適していると言われています。大量の乾燥食品をとりあつかう製麺工場やパン工場などには生息している可能性が非常に高い虫です。
 

③カビが繁殖している場所

①とも関連した場所と言えますが、工場内にカビが生えている場所があれば、そこが虫の発生源となってしまう恐れがあります。

食品工場の異物混入原因ともなる、チャタテムシやヒメマキムシという害虫は、カビがエサとなりますので、工場内の清掃が不十分でカビが生えている場合には、こういった虫が発生してしまう恐れがあります。
 

工場内部の防虫対策について

それでは、上で紹介したような、工場内部の虫の発生源について、効果的な防虫対策はどのようなことを行っていけば良いのでしょうか?ここでは、工場内部で行うべき防虫対策をご紹介していきます。
 

水に濡れる場所の防虫対策について

まずは「水溝、グリストラップ、トイレ」など、水に濡れてしまうことで、虫の発生源になる場所の防虫対策からご紹介します。

上述したように、こういった場所で発生する虫は、食品残渣や汚泥などの有機物をエサとして成長します。逆に考えれば、虫のエサとなるモノを、徹底的に清掃して無くしていくことで、虫の発生を抑えることができるわけです。一般住宅などであれば、虫を見つけた時に殺虫剤を使う、ハエトリガミを設置するなどの対策でも構いませんが、こういった対策は「虫を発生させない!」という根本的な解決策にはなっていません。

食品工場内部などであれば、気軽に殺虫剤を使用することもできませんし、虫の死骸が製品に混入してしまう恐れも考えられますので、日々の清掃を徹底的に行い、常に清潔な状態を保つようにしましょう。「濡れた場所」の防虫対策としては、徹底した清掃が最も有効な防虫対策になると考えられます。
 

保管庫などの防虫対策

穀物や乾燥食品の保管庫では、それらをエサとする昆虫の発生が考えられます。まずは、保管庫内にフェロモントラップなどを仕掛け、虫の発生状況を調べてみましょう。

保管庫などで発生する虫は、貯穀害虫や食品害虫などと呼ばれます。そして、保管庫内でこういった害虫が一度発生してしまうと、完全に排除するのが非常に難しくなると言われています。保管庫などの乾燥した場所の防虫対策は、フェロモントラップなどの仕掛けによって、虫を早期発見して対処するということが有効です。ただし、トラップの設置場所によっては、外部から同類の虫を引き寄せてしまう恐れがありますので、慎重に設置場所を検討してください。

なお、昆虫によって有効なフェロモンが異なりますので、トラップを仕掛ける前にどの種類に有効なのかをしっかりと調べて使用しましょう。使用後にフェロモントラップの結果を分析し、問題があるようであれば、工場内の改善を行う必要があります。
 

カビの発生を抑えることが防虫対策になる

カビをエサとする虫の防虫対策は、カビを繁殖させないという対策が有効です。

まずおさえておきたいのは、カビは「温度が-5~30℃(好条件は15~30℃)、湿度が80%以上」の条件で、糖分やでんぷんを始めとして、ホコリや塗料などが栄養となり繁殖するということです。つまり、高温多湿になりやすい食品工場はカビの繁殖に適した条件が揃っているということです。したがって、食品工場内で、ホコリが溜まりやすい場所などにはカビが発生してしまう恐れが高くなると考えましょう。 なお、食品工場などでは、調理器具や空調設備の裏側、天井裏などが、カビの発生ポイントになることが多く、そしてそのカビをエサとする虫も発生させてしまいます。防虫対策を考える場合、適切な湿度管理を行って、カビの発生を抑えるということが非常に有効になります。例えば、除湿器などで室内の湿度を低く保つようにするなど、簡単な対策でも有効な防虫対策になると言えます。

▼工場の湿度対策については以下の記事もご参考ください。
工場や倉庫での湿度対策とは?結露を発生させないためのポイント

エアーカーテンの導入

虫が出入口や搬出路から食品工場内に入ってくることが多いので、エアーカーテンの設置がおすすめです。エアーカーテンは他のカーテンと違って、屋内と外気の間に空気の壁を形成するため、隙間ができないので、空気の壁で虫の侵入を防ぐことができます。

ドアやシャッターの導入

ドアやシャッターの導入で虫の侵入をある程度防ぐことができます。出入り頻度が多い場所に対して、さらにエアーカーテンなどの導入がおすすめです。

ライトによる防虫対策

虫が光に集まる傾向がありますので、出入口にライトトラップや電撃殺虫器を設置したり、食品工場の外部にある照明設備に対して遮光処理をしたりすることがおすすめです。

防虫ブラシの導入

防虫ブラシはフレキシブルに動いて隙間をなくすことができますので、これを導入することで、ドアの下部やシャッターの隙間から虫の侵入を防止できます。

他にも、工場内の壁や床については、カビが発生しにくいコーティングを施し、工場内で使用する調理器具などもカビが生えにくい素材のものに変更することも非常に有効です。
 

食品工場は『セルフ防虫対策』が大切

ここまでは、工場内部を発生源とする『害虫』への対策についてご紹介してきました。それでは、食品工場などで異物混入を防ぐための防虫管理に関しては、どのように行っていくべきだと思いますか?ほとんどの方は、専門知識が必要な部分ですので、PCO専門業者に施設の防虫管理を委託するものだと考えていると思います。しかし、食品工場などでの防虫管理に関しては、ある程度の基礎知識を身につけ、それを自分自身で行うことは不可能ではありません。そして、工場の防虫管理を自分自身で行うようにすることは、さまざまなメリットが存在します。

食品工場などが自分たちで防虫管理を行うことは『セルフ防虫管理』などと呼ばれるのですが、勘違いしてはいけないポイントは「防虫管理に必要な作業、一切合切を自分たちで行う!」というものではありません。そもそも、施設の防虫管理を外部業者に委託している場合でも、その業者による点検訪問などに関しては、月1~数回程度しか行われないのが一般的です。しかし、異物混入の原因となる害虫は、いつ・どこで発生してもおかしくはないわけで、外部業者の点検の合間に問題が発生することも考えられます。 それでは、工場の従業員が防虫管理の知識を身に着けていた場合どうでしょうか?いつでも工場にいる従業員が防虫管理の知識を持っていれば、外部業者よりもはるかに早く問題を発見できる可能性があるわけです。

もちろん、食品工場で必要になる防虫管理でも、発生昆虫の駆除などに関しては、非常に高い専門知識が必要になることから、外部業者に委託したほうが効果的な結果になるでしょう。つまり、食品工場などでのセルフ防虫管理に関しては、「自分たちでできること」と「できない・難しいこと」をしっかりと切り分けて進めていくことが、トータルコストを抑えて的確な防虫対策になると考えましょう。

セルフ防虫管理に関しては、次回の記事で詳しくご紹介しますので、ぜひそちらもご参照ください!

 

まとめ

今回は、食品工場などの異物混入の原因となる『害虫』に関して、工場内部で発生する虫の防虫対策をご紹介してきました。食品工場など、人が口にする食品を製造する施設では、小さな虫が企業の存続すら危ぶまれる異物混入事件にまで発展してしまいます。そのため、どのような食品工場でも、防虫対策については慎重に検討してさまざまな対策を行っていると思います。

しかし、こういった食品工場での防虫対策に関しては、「虫は外から侵入してくるもの」というイメージが強いためか、工場内部の防虫対策が不十分になってしまうことが珍しくありません。この記事でもご紹介したように、工場内部にも虫を発生させてしまうポイントがいくつか存在しますので、工場内部の防虫対策も忘れずに行っていくようにしましょう!

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この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。