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投稿日:2023.09.12 
更新日:2023.11.07 

食品工場建設の際に知っておくべき立地・構造・設備のポイント

食品工場建設の際に知っておくべき立地・構造・設備のポイント

さまざまな建物の中でも高い安全性と高度な衛生管理を求められる食品工場の建設を検討する際には、立地や導入する設備、建物構造など、建設の初期段階から計画的に進める必要があります。工場が完成した後では、立地や作業動線などについて、何らかの問題が発生した場合、修正することが困難なためです。

そこで当記事では、食品工場を建設するための、工場の「立地・構造・設備」に関する注意点をご紹介します。

 

食品工場建設時の立地条件に関するポイント

まずは食品工場に限らず工場の建設には、立地が重要なポイントになります。事業活動に伴う騒音や臭いなどで、周辺環境に影響を与える可能性があるため、法律により建設できる場所に制限がかけられています。また、工場建設予定地の周辺環境によっては、塵埃や害虫の飛来により、工場の安全性が脅かされる危険があります。立地を検討する際は、次のポイントに注意して、慎重に土地を選びましょう。

 

用途地域について

建築基準法では、法第48条と法別表第2によって、用途地域ごとに建築できる建築物や建築できない建築物の種類が決められています。用途地域とは、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、次の12種類あります。

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 工業地域
  • 準工業地域
  • 工業専用地域

第一種・第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域では、延べ面積や階数などに関係なく、工場の建築はできません。(※一部、令第130条の3に該当する兼用住宅は建築可能です)
参照:工場建設時に知っておきたい法律・条令や手続きについて解説
> 建築基準法

 

異物混入の要因となる環境を避ける

食品工場の立地については、異物混入の原因を避けることも重要です。食品工場では、ネズミなどの害獣やコバエやゴキブリなどの害虫が悩みの種となります。害獣や害虫が工場の中に侵入すると、原材料を食い荒らしたり、死骸や糞が異物混入の原因となったります。
また、近くに煙を発生させる施設や、塵埃が発生する場所がないかチェックすることも大切です。工場の近くに煙や塵埃の発生源があると、風に乗って運ばれてくる恐れがあり、施設内が汚れる可能性があります。

食品工場を建設する土地を探す時には、害獣や害虫が発生しにくい、近くに煙や塵埃の発生源がない場所を選ぶのがポイントの一つになります。

食品工場の土地購入時に留意すべき確認ポイントは、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

災害リスクを確認する

食品工場の立地を決める際には、事前にハザードマップを確認し、どのような災害リスクがあるのかチェックする必要があります。日本は、古くから地震や台風などの自然災害が多い国として有名です。さらに近年では、夏場の集中豪雨などによる水害などが増加していますし、事前に災害リスクを確認することがとても大切です。ハザードマップは、自然災害が発生したときの被害を予想し、地図化したもので、国土交通省をはじめ、各自治体が作成し、ホームページで公開しています。ハザードマップでは、次のようなことが確認できます。

  • 震度5以上の地震が想定される地域か?
  • 台風、豪雨、津波による浸水が想定される地域か?
  • 想定される浸水深はどのぐらいか?
  • 土砂災害の危険性がある地域か?
  • ため池決壊の危険性がある区域か?
  • 豪雪による被害が想定される地域か?

事前にハザードマップを確認しておくことで、災害リスクが低い土地を選べるだけでなく、災害を想定した工場を建設することができるようになります。

> ハザードマップポータルサイト

 

食品工場の計画に関するポイント

衛生的な食品工場を建設するには、建物のレイアウト計画も重要です。レイアウトは、食品工場が完成してから修正することは難しいので、設計の段階から衛生面や安全性について計画的に検討する必要があります。

 

交差汚染を発生させない

衛生管理を行いやすい食品工場にするためには、人やモノの移動における交差汚染を防止する必要があります。食品工場は、食品を製造するエリアなど「衛生的に管理された清潔区域」と、それ以外の汚染区域に分けることができ、それぞれのエリアで働く従業員が接触や交差をしないレイアウトにする必要があります。

例えば、生産ラインで働く従業員と、事務処理を担うオフィス部門のスタッフや来客者はエントランスを分離して、同じ通路を使用しないようにするなど、交差汚染にならないレイアウトにすることが大切です。

 

サニテーション動線を考慮する

サニテーションとは、工場内を清潔に保つための殺菌作業や洗浄作業などを意味します。衛生的な食品工場を実現するためには、実際に工場で働く従業員の入退場プロセスを把握したうえで、それに適した構造を作ると、衛生的な環境を作ることができます。

食品工場で働く人が生産エリアに入る際には「出勤⇒作業服に着替える⇒汚れを落とす⇒製造エリアに入る」という流れで入場するので、これに沿ったサニテーションのレイアウトを検討する必要があります。従業員の行動フローを考えていない場合、消毒した後に生産エリアに入るために汚染区域を通り、交差汚染となるレイアウトになる可能性があります。

食品工場の動線計画とゾーニング計画については、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

食品工場の設備に関するポイント

最後は、食品工場に導入する設備に関してです。

 

蛇口や扉の非接触化

手洗い設備は、自動水栓や足でペダルを踏めば水が出る水道にするなど、直接手を触れなくても良い仕様にしましょう。また、作業場の出入り口は、センサーによる自動開閉扉にするなど、ドアノブに触れなくても出入りできるような設備にしましょう。

蛇口や扉に直接触れない仕組みにすることで、ハードによる衛生管理ができます。

 

埃対策

食品工場にとって、埃は異物混入など、食品事故の原因となります。したがって、埋め込み式照明やカバー付きの照明を採用する、制御盤上部に斜材で埃除けを設けるなど埃だまりを少なくするなどの工夫が必要です。

また、エアコンなどの空調機器についても、内側に埃が溜まると、稼働した時に埃が舞ってしまう原因となります。空調設備は、埃が舞いにくく、自動で内部を掃除してくれる機能などが搭載されている仕様を選びましょう。

また、空調設備などは、定期的に専門業者による掃除などのメンテナンスを受ける必要があるため、メンテナンス性にも配慮した設備の選定を心がけましょう。

 

ネズミや害虫を防ぐ

食品工場の設備を選定する際は、ネズミや害虫対策も考慮する必要があります。

外気を取り込む換気扇は、虫の侵入経路になります。換気扇からの虫の侵入を防ぐためには、フィルターが設置されていて、虫の侵入を防ぐような構造になっているものを選ぶ、ゴミ置き場など虫が発生しやすい場所から遠い位置に設置するなどの対策が必要です。

なお、ゴミ置き場について、生ごみがネズミやカラス、害虫のエサとなり、その他のゴミも害獣・害虫の住処となることで、数を増やす原因になる恐れがあります。そのため、生ごみは密閉容器に捨てるようにする、ゴミ置き場にネズミやカラスなどが入れないような構造にする、必要に応じて温度管理をするなどの工夫も必要です。

食品工場設備の導入ポイントと事例は、こちらの記事で詳しく解説しています。

食品工場建設・建築に関するよくある質問はこちら

 

まとめ

今回は、食品工場建設時の立地・レイアウト計画・設備のポイントについて解説しました。

食品工場は、人が口にする食品を加工・製造する施設なので、消費者が安心して食べられる食品を届けられるよう、さまざまな対策を施す必要があります。記事内でご紹介したように、「工場を建てられる場所」は、法律で制限をかけられているなど、専門家でなければ分からないこともあります。

食品工場を建設する際は、食品工場を熟知し、立地・レイアウト計画・設備に関して適切なサポートができるファクタスにご相談ください。

食品工場の施工実績一覧

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この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。