工場
投稿日:2023.10.10
更新日:2023.11.07
工場の建設を検討しているものの、どのような流れで進めていくべきか、基本的な部分が分からないという方もいると思います。
そこで当記事では、基本的な工場建設の流れや各工程の確認ポイントなどを解説します。なお、記事内では、工場の建設に関係する法律や、活用できる可能性がある補助金・助成金の情報についても簡単にご紹介します。
Contents
それでは、工場を建設する際の一般的な流れをご紹介します。ここでは、各工程で確認すべき注意点についても簡単にご紹介します。
STEP1 企画・基本計画
工場の建設は、目的を明確にすることが重要です。例えば、「現在使っている工場が老朽化しているから…」「事業を拡張するため生産量を増やす必要があるから…」「既存工場の生産ラインに課題があるから…」など、なぜ新しい工場を建設する必要があるかをはっきりさせましょう。
工場の建設は、基本計画フェーズで設定する目的に沿って全てが進められます。工場が完成し、稼働してから「生産ラインの課題が解決できていなかった…」となっても、その原因によっては改善することが難しいケースもあります。また、途中で設計変更が必要になった場合、予想外のコストが発生したり、スケジュールの遅延が発生する可能性があるため、初期段階で工場建設の明確な目的を設定することが重要です。
STEP2 設計・施工業者を選定する
工場の基本計画が完成したら、できるだけ早い段階で建設会社の選定を行いましょう。この際、建設会社選定は、見積り金額に注目しがちですが、価格だけでなく過去の施工実績や工場完成後のメンテナンスなども含めて、信頼できる建設会社を選ぶことが重要です。
工場の建設は、一般住宅の建設と異なり、工場立地法や都市計画法など、数多くの法令に適合させなければいけません。工場建設に関わる法律に精通し、豊富な実績を保有している知見がある建設会社を選びましょう。建設会社を選ぶときのポイントは、別のページで詳しく解説しているので、以下のページも確認してください。
> 建設会社の選び方
STEP3 基本設計
STEP1の基本計画に基づいて、設計方針や大まかな基本設計を立案します。例えば、工場の構造図やレイアウト図、工場内で働くスタッフの動線設計図、機器仕様書、機器構成図などの作成を行います。
既存の工場がある場合、基本設計の際は、現在のワークフローやスタッフの動線を把握し、より働きやすくするためにはどうすれば良いのかも踏まえて設計する必要があります。工場の生産性を最大化し、スタッフが働きやすい工場にするためには、この基本設計が重要なステップになります。
STEP4 実施設計
実施設計は、前工程で作成した基本設計に沿って、より具体的な設計を行うステップです。建築設計図を始めとして、機械の詳細配置図や配管図、配線図などを作成します。また、電気の必要量や照明、換気、空調などの各種設備、工場稼働に必要な給水・排水容量など、細部まで詳細を決めていきます。
STEP5 部材の調達と納入計画
工場の詳細な設計が完成したら、建設資材や機材、部材の手配を行い、どのタイミングでどこにどれくらい納入するのかといった計画を立てていきます。部材の納入計画は、工事進捗にも関係しますので、綿密な納入指示だけでなく、計画通り進んでいるのかをチェックできる体制についても定めておきましょう。また、将来的に交換することも想定し、搬出入が可能かどうかも考慮する必要があります。
STEP6 工場の建設工事開始
上記の計画や設計ができれば、建設工事が開始できます。しかし、工場の建設はここがゴールではなく、建設工事をスムーズに進めるための工程管理が重要です。工場のような大規模施設の建設においては、少し工程が遅れただけで、大きな損害につながります。したがって、工事の工程管理は、業者任せにするのではなく、発注者側もしっかりと現状を把握するようにし、遅れが生じた時に迅速に対応できる体制を作っておくことが大切です。
建設工事が完了すれば、官公庁検査が行われ、この検査で問題がないことが認められてはじめて、工場の使用許可が下り、工場の稼働が可能となります。
工場の建設は、さまざまな法律の基準をクリアしなければいけません。ここでは、工場の建設に関わる主な法律の特徴を簡単に解説します。
工場立地法は、工場建設時に「敷地内に緑地などを整備し、周辺環境を保護する」ことを義務付けた法律です。この法律は、高度経済成長期真っ只中の1973年に制定されたのですが、その理由は、日本国内で急速に工業化が進んだことで、「水俣病」や「イタイイタイ病」、「四日市ぜんそく」などの工業病の発生やさまざまな環境問題が表面化したためです。経済の発展と福祉の向上を両立させるため、工場立地法によりさまざまな規制が設けられています。
例えば、敷地面積や建築面積が一定以上の大規模な工場を建設する場合、敷地内に一定面積以上の緑地を設けなければならないなどの規定が作られています。
日本では、都市計画法により、まちづくりのルールが定められています。都市計画法は、次のような目的で制定されています。
「都市計画法」は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることで、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、それによって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的としている。
引用:国土交通省資料より
都市計画法では、土地が属する地域によって、建てられる建物と建てられない建物が決められています。つまり、いくら自社にとってメリットの高い工場用地が見つかったとしても、立地によっては工場を建てられない場合があります。
都市計画法は、日本の国土を「都市計画区域」と「準都市計画区域」に分類していて、さらに都市計画区域は、「市街化区域」と「それ以外の区域(市街化調整区域など)」に分類されています。工場が建設できるエリアは、この中でも市街化区域のみと決まっています。また、市街化区域も、土地利用の観点から、13の用途地域に分類されており、工場の建設に適した用途地域は、準工業地域、工業地域、工業専用地域となります。
建築基準法は、工場の建設に限らず、全ての建物に適用される法律です。建築基準法は、無秩序な建物の建築を防ぐために作られた法律で、建物の建蔽(けんぺい)率や容積率、建物高さなど、最低限のルールが定められています。日本国内では、どのような建物であっても、この法律に則って建てられることになっており、工場の建設においては、建築基準法に従って審査・検査を受ける必要があります。なお、検査は、次の3段階にて行われます。
工場の建設時には、上記以外の法令が関わってくる場合があります。例えば、製造過程で騒音や振動を発生させる可能性がある場合、「騒音規制法」や「振動規制法」が定める基準を守る必要があります。この他にも、大気汚染防止法や水質汚濁防止法、悪臭防止法など、工場の種類によって関係する法令が異なります。
工場の建設は、関連する法令に精通した専門家の知見に頼るためにも、同じ種類の工場の施工実績を豊富に持っている業者を選定することがおすすめです。
それでは最後に、工場の建設時のコスト負担を軽減してくれる補助金・助成金を紹介します。
ものづくり補助金は、その名称から工場の建設工事とは無関係のように感じる方が多いと思います。実際に、この補助金は、中小企業や小規模事業者が行う「革新的なサービスや製品の開発」、「生産プロセスやサービス提供方法の改善」などについて、それに必要となる設備・システムの導入にかかる費用の一部を補助してくれるものです。主な補助対象は、設備投資(機械装置・ソフトウェア構築)となっています。
ただ、新設する工場に対しても、生産性向上に繋がるものであれば、そのために導入する設備費用に適用できる可能性がありますので、活用できるかどうか検討してみることがおすすめです。
ものづくり補助金の詳細
これは、食品工場向けの補助金です。正式名称は「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」で、「HACCP等の認定取得」「輸出先国が求めるISO・FSSC・JFS-C等の認定取得」「輸出先国のニーズ対応」などを満たすための製品製造のための施設・設備の整備に対して補助金が支給されます。補助対象事業として「施設の新設・増築・改修・修繕」となっていますので、HACCP対応の食品工場建設時に活用できるでしょう。
食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業の詳細
正式名称は、「先進的エネルギー投資促進支援事業費補助金」で、資源エネルギー庁省エネルギー部(上部組織は経済産業省)による補助金制度です。この補助金制度は、国内での省エネ設備の導入を積極的に促すことが目的で作られており、令和3年〜12年までの期間限定事業となっています。ただ、省エネ性が高い設備なら何でも補助されるというわけではなく、補助金の支給対象となる設備やシステムは、大きく分けて以下の4つです。
今回は、一般的な工場建設の流れと、工場建設に関連する法律や補助金制度などについて解説しました。工場の建設は、さまざまな法律への対応が必要になり、工場完成後に法に適合していないことがわかれば、工場が操業できないなど、最悪の事態に発展します。
工場建設を成功させるためには、何よりも施工を依頼する建設会社選定が重要で、工場建設の経験が豊富、かつ各種法律の知識も備えた安心できる建設会社を選ぶことをおすすめします。
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この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。