工場
投稿日:2025.06.24
食品工場の床には、衛生面や防塵性に優れ、かつ長期間使用に耐えられるといった特性が求められます。そのため、製造環境に適した性能を備えた適切な床材を選定することが重要です。一般的に、工場や施設の床はコンクリートがむき出しのままではなく、塗装や塩化ビニール製のシートなどで表面が保護されています。これは、コンクリートをむき出しにしておくと、人の歩行や台車の通行によって表面が摩耗して粉塵が発生したり、高温の湯・油・塩分などの影響で劣化や腐食が進行する恐れがあるためです。
食品工場においては、製造環境に応じて床材に求められる性能が異なります。一般的には、耐熱性・耐酸性・耐アルカリ性・耐摩耗性といった機能が重視されますが、床材を選ぶ際には、日常的に使用する洗浄剤との相性にも注意が必要です。というのも、床材によっては使用が推奨されていない洗浄剤があり、それを誤って使用することで床が早期に劣化するリスクがあるためです。
本記事では、食品工場に適した床材を選ぶ際のポイントを詳しく解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
Contents
それではまず、食品工場で採用されている主な床材とそれぞれの特徴について解説します。
食品工場で使用される主な床材には、以下のような種類があります。
食品工場に限らず、多くの施設では、コンクリートの床がそのままむき出しになっていることは少なく、何らかの床材が施工されています。では、なぜ床材をわざわざ施工する必要があるのでしょうか。「人や台車が通れるのであれば、コンクリートを平らに仕上げておけば十分なのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、床材の施工には、次のような明確な目的があります。
このように、床材の施工には多くの目的があり、食品工場における安全・衛生・効率を支える重要な要素となっています。
食品工場における床材の選定では、各エリアの使用環境や清掃方法をしっかりと考慮する必要があります。床材が適切でない場合、早期の劣化や不具合の発生につながり、生産効率や安全性に悪影響を及ぼします。ここでは、具体的な場面別に床材選定のポイントをご紹介します。
床材は、使用する環境に適していないと、「はがれ」「割れ」「変色」などのトラブルが短期間で発生します。例えば、食品を煮炊きする回転釜の周辺に耐熱性のない床材を使用すると、熱水の影響で床材が劣化し、さらに荷重がかかることでひび割れから水が浸入し、下地のコンクリートを傷めてしまいます。これにより床材の「浮き」や「剝れ」といった深刻な問題が生じます。
こうしたトラブルを防ぐためには、使用環境に合わせて適切な性能を持つ床材を選定することが極めて重要です。ここでは、食品工場内をいくつかのエリアに分け、床材を選定する際のポイントをご紹介します。
製造機械やフォークリフトなどの重量物が行き来するエリアでは、高い耐久性が求められます。摩耗や衝撃に強く、長期間の使用にも耐えられる床材を選ぶことが重要です。
おすすめはエポキシ系、ポリウレタン系の床材です。
高温の油や熱水が頻繁にかかるエリアでは、耐熱性がないと塗膜がすぐに劣化してしまいます。おすすめの床材は、熱による変色やはがれを防ぎ、長期間にわたって床を保護できるシリコン系、耐熱エポキシ系です。
清掃や消毒で使われる薬品、または製造過程で使用する溶剤や油に床が触れる場合は、薬品に強い床材が必要です。おすすめはエポキシ系、ポリウレタン系の床材です。
以上の床材の特性を踏まえたうえで、たとえ台車などによる荷重が想定されるエリアであっても、実際の負荷は使用する台車のタイヤの種類や材質、車輪の直径・幅によって大きく異なります。そのため、使用環境に適した床材を選定するには、こうした情報を施工会社やメーカーと共有することが非常に重要です。
食品工場における床材の選定では、「清掃のしやすさ」ということを考慮することが大切です。人が口にする食品を取り扱う工場では、常に衛生的な環境を保つ必要があり、日々の清掃作業が非常に重要な要素となります。
清掃しやすい床を実現するためには、熱水や蒸気洗浄に耐えられる「耐熱性の高い床材」を採用するのが効果的です。耐熱性に優れた床材であれば、洗浄時の温度変化による膨張・収縮が抑えられ、床材の剥がれなどのトラブルを防ぐことができます。さらに、清掃時には洗剤や消毒液の使用が想定されるため、それらの薬剤に対して耐性を持つ床材を選定することも重要です。床材によって対応できる薬剤や環境は異なるため、用途に合った製品の選定が求められます。
食品工場では、床を清潔に保つため、次亜塩素酸ナトリウム溶液やアルコールなどを用いて消毒することも珍しくありません。したがって、床材を選定する時には、普段の清掃方法や使用する薬剤の種類を施工会社と共有し、耐えられる床材を選ぶ必要があります。
床材の選定では、性能だけでなく「費用対効果」も重要な視点です。高耐久のエポキシ樹脂やウレタン樹脂は初期費用が高く感じられますが、耐久性が高いためメンテナンスの頻度が減り、中長期的にはコスト削減につながります。
短期的なコストダウンを優先して安価な床材を選んだ結果、すぐに再施工が必要となり、結果的にトータルコストが高くなるケースも少なくありません。
もちろん、床材の選択肢としては、自社工場の環境に適した製品を選ばなければいけません。高温の油や湯を利用するという環境であれば、耐熱性や耐水性、耐油性などの性能を兼ね備えた高耐久の床材を選ぶことで、将来的な無駄なコスト支出を抑えることができ、結果的に経済的な選択ができます。
また、使用する台車のタイヤ素材・直径・幅など、床にかかる負荷は細かな条件で変わります。適切な床材を選定するためには、使用環境の詳細な情報を施工会社やメーカーと共有することが大切です。
今回は、食品工場に採用する床材の選定ポイントについて、複数の視点からご紹介しました。食品工場を新築・改修する際には、どのような床材を採用するかを慎重に検討する必要があります。工場の建設や改修には、多額の費用がかかるため、コストを抑えたいと考える事業者様も多いかもしれません。
しかし、記事内で述べたように、床材の選定においては、作業環境、清掃方法、使用薬剤などの条件を踏まえたうえで、適切な性能を持つ床材を選ぶことが重要です。床の劣化は、転倒事故や異物混入といった重大なトラブルにつながる恐れがあるため、重要な判断が求められます。
適切な床材の選定は、安全性・衛生性・経済性すべてを守るための重要なステップです。食品工場の新設や改修、床材の塗り替えをご検討の方は、食品工場の設計・施工専門の【Factas】にご相談ください。
この記事を書いた人
安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。