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投稿日:2023.08.18 
更新日:2023.09.05 

食品工場の土地購入時に留意すべき確認ポイント

食品工場の土地購入

食品工場の建設を検討する際、何を重視して土地を選べば良いでしょう?

食品工場の建設は、必要な面積を確保する以外に、コストや交通アクセスなどの立地条件、土地の形状や災害リスクなど、さまざまな角度から検討する必要があります。

工場建設が完了した後では、何か問題が発覚したとしても改修することが難しいからです。また、食品工場の建設計画において、立地条件によって必要になる設備もあるため、総工費(建設費や設備費)に大きな影響を与えます。

そこで当記事では、食品工場を建設する土地について、購入時に留意すべきいくつかのポイントを解説します。

 

食品工場の土地探しにおける確認ポイント

食品工場の建設を計画する場合、何に気を付けて土地を選べばよいか分からない方が多いと思います。ここでは、設計者の立場から、ポイントを解説します。

  • 土地探しは何を優先するか?
  • 土地にどのような違いがあるか?
  • 実際に土地を見に行く場合、何を確認すれば良いか?

 

ポイント1 土地探しは何を優先するのか?

食品工場の建設で土地探しを行う際の一つ目のポイントは、「土地は何を優先して探すの?」を明確にすることです。例えば、次のようなポイントについて優先順位をはっきりさせます。
 

  • コスト
  • 立地・既設建物とのアクセス
  • 土地の広さ、形状

 
食品工場の建設は、大きな投資となります。事業予算が決まっている場合、土地と建物のコストバランスを念頭において土地探しを進める必要があります。いくら好立地の土地を見つけても、高すぎる土地を購入すると、建物に必要なお金をかけられなくなるリスクが生じます。

立地については、既存工場やその他の部門が入った事業所などとのアクセスも検討する必要があります。既存施設とのアクセスの良さを重視する場合、限られた土地の中から選ばなければならないため、コストよりも立地が優先されるでしょう。この他にも、「建物は平屋にしたいから、広い土地が欲しい」「効率的な土地利用を検討しているため、不整形な土地ではなく、矩形の土地にしたい」と言った明確な要望がある場合、これらの要望を優先して土地探しをする必要があります。

もちろん、実際に土地探しを進めていくうちに、優先順位が変わってしまうこともありますが、何らかの基準を決めて探し始める方が、自社に最適な土地を見つけやすくなります。

 

ポイント2 土地の違いは?

土地探しを進めるうえで、複数の土地が候補にあがり、比較検討しなければならない場合もあるでしょう。同じように見える土地でも、その詳細を確認すると、さまざまな違いがあります。土地ごとの違いは、『①法令の確認』『②周辺環境の確認』の2つがポイントです。以下でそれぞれのポイントについてもう少し詳しく解説します。

 

①法令の確認

法令の確認については、次の点を確認する必要があります。

  • 用途地域
  • 開発工事の有無
  • 土壌汚染の有無
  • 建ぺい率、容積率の確認

まず用途地域です。用途地域の詳細は、弊社が運営している別サイト内の「新築で倉庫の建設を検討している方がおさえておきたい土地に関する注意点!」という記事でご確認ください。。

用途地域
引用:みらいに向けた まちづくりのために

日本国内の土地は、土地計画法によりさまざまな基準が定められています。食品工場などの製造施設については、建築することができる土地が制限されています。延床面積150㎡を超える食品工場が建築できる用途地域は、上図の緑線で囲まれた「準工業地域、工業地域、工業専用地域」の3つとなります。この他にも、自治体によっては特別な区域の指定を行っている場合もあるため、「食品工場が建てられる土地か?」を確認する必要があります。

次に「開発工事の有無」です。開発行為とは、都市計画法第4条第12項で「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう」と定義されています。例をあげると、次のような事例です。

開発行為とは
引用:仙台市HP 開発行為とは

食品工場は、市街化区域の外側、市街化調整区域でも建設は可能ですが、市街地として整備されていない場所が多いため、上図のような開発工事が発生する場合があります。この場合、「開発工事は工場建設に先立って行う必要がある」と決められているため、開発工事が終わらなければ、食品工場の建設工事ができません。開発工事は、専門的な協議が必要なため、時間を要します。さらに開発工事にかかるコストは施主が負担しなければならないため、土地を取得する際は「土地代+開発工事費」とコスト高になります。

つまり、開発工事の有無で、食品工場が完成するまでの期間や建設費が大幅に変わります。

食品工場を建設する土地の検討項目としては「土壌汚染の有無」も重要です。土壌汚染とは、有害物質やそれを含む排水が土中へ浸透することにより生じるのですが、『土壌汚染対策法』により、土壌汚染の可能性が高い土地は、工事や事業の廃止などの制限が課せられる場合があるため注意が必要です。また、自治体によっては国の基準よりも厳しい規制が課せられている場合もあるので、土地の候補が見つかった際、土壌汚染に関する規制などもしっかりと確認してください。

最後は、建ぺい率と容積率です。基本的に、工場を建てられるような土地は、建ぺい率や容積率が問題になることは少ないですが、必ず確認が必要です。
 

②周辺環境の確認

食品工場を建設する土地については、法令以外にも周辺環境について注意しなければならないポイントがいくつかあります。土地を選ぶ際は、次の点を確認しましょう。

  • 住宅が近いか?
    食品工場は製造の過程で騒音やにおいが伴う場合があります。したがって、住宅地が近い場合は、騒音対策のための防音対策、におい対策のための排気処理装置スクラバーの設置などが必要になる場合があります。過去には、におい対策を怠ったことで、周辺住民から訴訟を起こされ、最終的に工場を移転せざるを得なくなったという事例も存在します。
  • 海は近いか?
    海に近い立地の場合、潮風による塩害を受けやすいので注意が必要です。塩害対策としては、ステンレスなど潮風に強い建材を採用する、耐候性塗料の採用などと言った方法がありますが、工場建設にかかるイニシャルコストが高くなります。また、メンテナンス頻度が高くなる可能性があり、メンテナンスコストも高くなります。
  • ハザードマップの確認
    日本は、台風や地震など自然災害が多い国として有名です。したがって、食品工場を建設する土地を検討する際、ハザードマップの確認も行いましょう。ハザードマップは、各市町村のHPなどで公開されていて、洪水、内水、高潮、津波、土砂災害、火山の危険度が確認できます。なお、「リスクが高い土地=NG」というわけではありません。ハザードマップで土地のリスクを確認すれば、適切な対応が可能です。例えば、水害のリスクがある場合、土地の嵩上げをする、重要な機器は2階以上に設置するなど、対策を取る対処法もあります。

このように、土地特有の問題を確認することでリスクが回避できるだけでなく、他の土地にはないメリットを見つけることも可能です。例えば、ハザードマップ上、リスクが高い土地は、土地代が安くて広い場所があるため、建設時の対策次第では有効な土地選びになることもあります。

 

ポイント3 土地の何を確認すれば良い?

最後は、実際に購入予定土地の現地調査を行う際の、確認ポイントです。

 

①接道状況について

食品工場は、原材料の搬入や商品の搬出など、大型車両の出入りが多いです。したがって、工場の建設は周辺の道路状況についても確認する必要があります。例えば、次の点を確認しましょう。

道路幅員

  • 道路幅員の確認
    搬入・搬出車両の出入りに問題がないか確認する。例えば、自治体によって、接道に対して1カ所しか出入口を設けられない場合、地域特有の規定も確認します。
  • 幹線道路からのアクセスルートを実際に確認
  • 建設予定地付近に交差点がないか
    交差点や横断歩道から5mの範囲は出入口を設けられません。

 

②インフラの整備について

次にインフラの整備状況を確認しましょう。

今の時代、電気やガス、水道などのインフラについては、どこでも整備されていると考えてしまいがちです。しかし、インフラが整備されていても、「受電できる電気容量に制限がある」ことがあります。この場合、受電設備の増設が必要になる、そもそも電気容量を増やすことができない可能性があります。
計画地
上の写真は、当社で提案中の案件です。画像にもあるように、既設汚水配管の最終地点が計画地まで約60mある状況です。この場合、道路を掘削して汚水配管を延長する必要があり、約1000万程の費用が発生しました。

この他にも、大量の水を利用する食品工場は、十分な給水量が確保できるか、排水に関する制限がないかも確認しましょう。土地によっては、厳しい排水基準が設けられていることで、排水処理施設が必要になる場合があります。③計画地の上空について

現地に足を運べば、地図上では分からない土地上空の確認を行えます。例えば、下の写真のような高圧線が上空を通る土地(高圧線地下)は一般の土地にはない制限がかけられます。
高圧線

高圧線地下の制限

  • 17万ボルトをこえる特別高圧架空送電線は水平距離3mは建築できません
  • 17万ボルト以下の送電をする高圧線では、直下であっても3mまたは(3+C)m以上の離隔距離を取ることで建築できます

   C=(使用電圧-35000V)÷10000V×0.15 下線部は小数点以下切り上げ

参考:宅建マイスター認定試験「高圧線による土地利用制限リスク」

高圧線地下は、「土地代が安い」というメリットがありますが、建築制限、施工時の制限、非接触での感電などデメリットがあるので注意が必要です。

 

まとめ

今回は、食品工場の建設について、土地購入時に留意すべき確認ポイントを解説しました。食品工場の建設は、単に広い土地を確保すれば良いわけではなく、コストや交通アクセスなどの立地、土地の形状や災害リスクなど、さまざまな角度から検討する必要があります。

もちろん、企業によって「何を重要視するか?」は異なるため、まずは自社の優先順位を決めることからはじめましょう。なお、土地探しの際に注意すべきポイントは、記事内でご紹介した以外にも検討項目があるため、専門家の助けも借りながら、賢く土地探しをしましょう。

食品工場建設の実績が豊富な三和建設のFACTASでは、食品工場建設のための土地探しのサポートも可能です。食品工場の建設をお考えの方はぜひ、食品工場における建設会社の選び方をご覧ください。

この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。