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投稿日:2022.11.30 
更新日:2022.12.02 

フードディフェンスの重要性と基本的な考え方

2021年6月から、HACCPの導入・運用が完全義務化となっていますので、食品関連事業者は既に対応を済ませていることでしょう。

しかし、食の『安全』を考えた時、「HACCPによる衛生管理」が行われていればそれで十分かというとそうではありません。食品の安全性を確保するための対策には、「フードセーフティ」と「フードディフェンス」という2つの考え方があるのですが、日本では、フードディフェンスへの対策がまだ不十分だと言われています。HACCPは、「意図的ではない異物混入などを防止するための取り組み」が盛り込まれていますが、これはフードセーフティのために講じられる対策で、『意図的な異物混入』を防止することはできません。そこで、悪意がある人により、意図的に異物や有害物質を食品に混入し、重大な食品事故に発展するのを防ぐための対策として考案されたのがフードディフェンスという考え方です。

フードディフェンスは、2001年にアメリカで起こった同時多発テロをきっかけとして、食品の安全性を守るために始まった取り組みと言われています。日本国内でも、過去に冷凍食品に有害物質が混入される事件が起きており、多くの食品関連事業者においてフードディフェンスへの取り組みが重要視されるようになっています。

当記事では、フードディフェンスの概要や具体的な取り組み内容をご紹介します。

フードディフェンスとは?

まずは、フードディフェンスがどのようなものなのかを解説します。冒頭でご紹介したように、フードディデンスは「食品に対する意図的な異物混入を防ぐ」ための取り組みのことを指しています。ちなみに、日本語に直訳すると『食品防御』となり、食品中に入っていてはいけないもの(食用に供せない異物や有害物質)が第三者の手によって意図的に混入されることを防ぐ取り組みのことです。

なおフードディフェンスは、HACCPを補完する形で導入されています。先ほどご紹介したように、HACCPはあくまでも「意図的でない異物混入」という危害を防止するための衛生管理手法であり、悪意がある人の手による危害は想定していません。HACCPによる衛生管理は、「人為的なミス」や「機械の故障」など偶発的な『事故』による食品への危害を防止するのが目的です。しかし、フードディフェンスは悪意のある第三者が「わざと」食品へ異物や有害物質の混入を図る『食品テロ』を防止するための取り組みです。

食品テロと聞くと、「そのよう物騒な事件が日本で起こるの?」と、フードディフェンスの必要性に疑問を感じる方がいるかもしれません。しかし、日本国内でも、冷凍食品に農薬が混入された事件などが実際に起きたこともあり、食品の安全性は消費者からも非常に高い関心を持たれています。

参照:Wikipedia「アクリフーズ農薬混入事件」

HACCPとの違い

 

HACCPによる衛生管理でも、食品への異物混入防止に関する事項は想定されています。しかし、HACCPでは「悪意のある第三者による食品危害」は想定されていないことから、食品テロなどの危害を十分に防止することができません。フードディフェンスは、異物混入の要因として「悪意のある人」の存在まで想定している点が、HACCPなどのフードセーフティとの明確な違いです。

関連記事:HACCP(ハサップ)とは?義務化された食品衛生管理手法をわかりやすく解説

フードディフェンスの具体的な取り組みについて

それでは、第三者による異物混入を防ぐためのフードディフェンスについて、具体的にどのような取り組みを行えば良いのかについて解説します。ここでは、日本食品衛生協会が公表している「食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)」を参考に、代表的な取り組みをご紹介します。

フードディフェンスでは、意図的な異物混入を防止するため、以下の4つの取り組みが重要とされています。

①人的要素(部外者)について

フードディフェンスにおいて重要になるのが、人の動きの管理で、特に、部外者が食品工場に立ち入る時の対策です。食品防御対策ガイドラインでは、以下のような対策を行うべきとしています。

  • 訪問者への対応をマニュアル化
    事前アポイントがある場合、訪問者の身元、訪問理由、訪問先を確認し、可能な限り訪問場所まで従業員が同行する。なお、「飛び込み」の訪問者については、原則として製造現場への入場を認めない。ただし、訪問希望先の従業員に面識の有無、面会の可否を確認し、敷地内への立ち入りを認める場合、事前アポイントのある訪問者と同様の対応にする。など
  • 訪問者の所持品検査
    施設のメンテナンスなどに関わる業者など、工場内を単独で行動する必要がある訪問者については、持ち物を十分に確認し、不用なものの持ち込みを防止する。特に、食品取扱いエリア/保管エリア/ロッカールームへ立ち入る場合は、徹底した持ち物管理が必要。など
  • 訪問者の種類別に、車両のアクセスエリア、荷物の持ち込みエリアを設定
    全ての訪問者について、車両のアクセスエリアや荷物の持ち込みを一律に制限することは現実的ではありません。したがって、施設メンテナンスなどに関わる訪問者については、それが明確にわかるよう、駐車エリアを設定するなど、施設の立ち入り管理を行う。など
  • 郵便・宅配物の受け入れ場所を設定(数か所に限定する)
    郵便物や宅配物、受け取り人などの違いにより、配達員が食品工場内を自由に移動できる状況は危険。したがって、郵便、宅配物などの受け入れ先(守衛所、事務所など)を設定し、配達員が食品工場内を自由に移動できないようにする。など

フードディフェンスでは、以上のように人の動きを管理することで、食品への異物混入を防ぐことが重要とされています。

②人的要素(従業員など)について

フードディフェンスでは、従業員など、対内的な人も注意すべきポイントに含まれています。普段から、業務に携わる従業員は食品に最も近い位置にいます。これに対するフードディフェンスは極めて重要になります。具体的な対策としては、以下のようなポイントがあげられています。

  • 制服や名札、IDバッジ、鍵(キーカード)などの管理
    従業員の移動や退職時には、施設の入退室に関係するものを必ず返却させる。など
  • 可能な範囲での身元確認
    身分証や証明書などは、原本の提示を受け、面接などを通じて、履歴書などに記載されている内容(資格や職歴など)に虚偽が無い事を確認する。など
  • 私物の管理
    製造エリア内への持ち込み禁止品の指定は際限がないため、原則として私物の持ち込みを禁止し、持ち込み可能品をリスト化する。また、持ち込む場合には、個別に許可を取る仕組みにしておくと、管理がしやすい。など
  • 就業中の全従業員について、移動範囲を明確化
    制服や名札、帽子の色、IDなどによって、従業員の移動可能範囲や持ち場を明確に識別できるようにする。これにより、他部署間の理由のない移動を制限でき、異物混入があった場合に混入箇所を特定しやすくなる。など

内部に向けたフードディフェンスでは、人の管理や配置が重要です。したがって、製造エリアへの入退室の際にIDカードなどを使い、従業員の行動を把握・管理することにより、製造エリア内に私物を持ち込むことを制限することが、フードディフェンスとして有効な対策です。

③施設管理について

フードディフェンスでは、不審者が施設に立ち入ることを防ぐ仕組みづくりが重要です。例えば、24時間常駐の警備体制を敷いたり、防犯カメラ・監視カメラを設置することで、抑止力を働かせるといった対策が有効です。他にも、以下のような対策を検討しましょう。

  • 工場が無人となる時間帯について、防犯カメラなど防犯対策を講じる。
  • 誰でも自由に鍵を持ち出せるような状態にならないよう、鍵の管理方法を策定する。
  • 製造棟、保管庫については、定期的に鍵の取替えや暗証番号の変更を行うなど、外部からの侵入防止対策()を適切に行う。
  • 製造棟の出入り口や窓など、外部から侵入可能な場所を特定し、確実に施錠するなどの対策を行う。
  • 井戸、貯水、配水施設への侵入防止措置を講じる。
  • 工場内に試験材料(検査用試薬・陽性試料など)や有害物質が存在する場合、これらの保管場所を定め、当該場所への人の出入り管理を行う。

④組織マネジメントについて

フードディフェンスを実践するには、それに適した組織を作ることが重要とされています。フードディフェンスは、個人単位で行うものではなく、組織全体で行わなければならないものですので、それができるような教育を行い、管理体制を構築することが非常に重要です。会社全体でフードディフェンスに取り組むことができるようになれば、異物混入事故が起きた場合でも、素早く対処することができ、消費者への被害を未然に防ぐことができるでしょう。

食品防御対策ガイドラインでは、組織マネジメントについて、以下のような対策が必要としています。

  • 食品工場の責任者は、日ごろから全ての従業員等が働きやすい職場環境の醸成に努める。これにより、従業員などが自社及び自社製品への愛着を高め、自社製品の安全確保について高い責任感を感じながら働くことができるような職場づくりを行う。
  • 食品工場の責任者は、自社製品に意図的な汚染が疑われる事態が発生した場合、消費者や一般社会から、その原因としてまず最初に内部の従業員などに対して疑いの目が向けられる可能性が高いことを、従業員などに意識付けておく。
  • 製品の異常を早い段階で探知するため苦情や健康危害情報などを日常的に確認するとともに、万一、意図的な食品汚染が発生した際に迅速に対処できるよう、意図的な食品汚染が疑われる場合の社内外への報告、製品の回収、保管、廃棄などの手続きを定めておく。

参照:食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)

まとめ

今回は、食の安全を確保するための重要な取り組みであるフードディフェンスについて解説しました。「食の安全を守る取り組み」と聞くと、HACCPをイメージする方が多いですが、フードディフェンスは、HACCPを補完するための取り組みとして、日本国内の食品関連事業者の間で注目度が高くなっています。

HACCPとの違いに関しては、同じ異物混入を防止するための対策をとる場合でも、その要因に「意図している人」を想定して対策をとるか否かという部分になります。HACCPによる衛生管理は、あくまでも偶発的な『事故』を防止するための衛生管理手法で、悪意のある人が異物や有害物質を食品に混入しようとした場合までは、防ぐことができません。

フードディフェンスは、このような悪意がある人の手による異物混入から食品の安全を守るための取り組みです。過去には、日本国内の冷凍食品工場にて、製造品に農薬が混入し大規模な自主回収となる事件が発生しています。そしてこの事件は、従業員の内部犯行によるもので、意図的に食品へ有害物質が混入された「食品テロ」とも呼べる事件であったことが分かっています。

つまり、食品の安全を守るためには、偶発的な事故の対策を行うだけでなく、人による意図的な異物や有害物質の混入も防がなければいけないため、フードディフェンスの取り組みも重要です。

この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。