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投稿日:2022.11.28 
更新日:2023.11.07 

食品工場のカビ対策!建材の選び方でここまで変わる

今回は、食品工場における『カビ対策』についてご紹介します。

食品を取り扱う施設にとって、カビの発生は製品への異物混入など食品事故の原因となり、企業の信頼が大きく揺らぐ危険があるため、どのような施設でも入念なカビ対策を行っていると思います。

ただ、食品工場は、水を使う、大量の水蒸気が発生する、大型の冷蔵・冷凍設備が設置されているなど、多湿状態が保たれやすい場所が多いことから、カビが発生しやすい環境となってしまいます。したがって、日々の清掃でカビ対策を行うことは当然として、「そもそもカビが発生しにくい施設にする」ことが重要です。

当記事では、カビが発生しにくい施設を作るため、おさえておきたいポイントをご紹介します。

カビが発生しやすい環境とは?

カビには発生しやすい環境があります。カビ対策の説明の前に、カビが発生しやすい環境について簡単にご紹介します。

  • 温度
    カビの発生に最適な温度は25~28℃とされています。ただし、これ以外の温度では成長しないわけではなく、0~40℃の範囲は発生可能な温度とされており、カビの種類によっては60℃以上でも発生します。なお、25~28℃という温度は、ちょうど夏前の梅雨時期の気温です。梅雨時期は、長雨が続くことで湿度が高くなることから、カビが発生しやすいというイメージですが、実は温度の観点でも梅雨はカビの発生に最適な時期となります。
  • 湿度
    カビは、湿度が65%を超えると繁殖しやすくなります。そして湿度が高くなればなるほど繁殖スピードが上がります。なお、湿度が65%以下でも、「増えにくい」とされているだけで、カビは生存できます。そしてカビの中には、乾燥した条件でも育つ種類もあります。
  • 栄養
    カビが繁殖するためには栄養が必要になります。カビが好んで食べるとされているのは、デンプンや糖分で、餅や食パンなどにカビが生えやすいのは、好物だからです。ただ、これ以外にもさまざまなモノを栄養として成長し、人の垢やホコリ、壁材や塗料などもカビの栄養になります。
  • pH(ペーハー)
    phは、水素イオン濃度のことで、「酸性・中性・アルカリ性」を判断する指標です。カビの成長に適している条件は「ph4~4.5」で弱酸性の狭い範囲とされています。ただ、カビの生存自体は、「ph2~8.5」までと、強酸性から弱アルカリ性までかなり幅広い条件に耐えられます。

食品工場内でカビが発生しやすい場所とは

カビが発生しやすい条件は、湿度(水分)・温度・栄養源の3要素ですが、食品工場は、これらの条件全てを兼ね備えており、カビにとっては正にうってつけの環境と言っても過言ではありません。人が口にする食品を取り扱う施設である食品工場は、その他の施設とは比較にならないほど高度な衛生管理体制が整えられているものの、以下のような場所でいつの間にかカビが繁殖しているというケースが考えられます。

  • 水回り
    シンクなどの水回りは、常に高湿状態が保たれていますので、カビの繁殖に適した条件となります。
  • 調理器具や製造機械
    食品に直接触れる調理器具や製造機械は、カビの栄養源となる食品残渣が付着しやすいため、カビの発生源になることが多いです。さらに、大型製造機械や大型冷蔵庫などは、設備の裏側にカビが大量繁殖するケースが非常に多いです。食品工場は、日常的な清掃作業も丁寧に行われていますが、大型機械の裏側など、清掃ができない場所ができてしまいます。そして、機械の裏側にはホコリなども溜まりやすいので、カビの繁殖に適した条件が揃います。
  • 水蒸気が発生しやすい場所の天井
    総菜工場などでは、壁際に回転窯を設置して作業するといったレイアウトの場合、その部分の天井などにカビが繁殖してしまうリスクが高いです。調理エリアの中でも、隅は空気が滞留するので、湿気がこもりやすく、カビの繁殖に適した条件になります。また、床などは毎日掃除する施設が多いですが、天井は手が届かないことから、掃除できない施設が多いため、気付いたときには天井にカビが生えている状況になります。

上記のように、食品工場には、カビが繁殖しやすい場所が多く存在します。シンクなどの水回りや、調理器具であれば、日々の清掃を行うことでカビを発生させないように注意することは可能です。そして、どの食品工場でも、目に見える範囲に関しては、丁寧に掃除を行い、カビの発生を抑えているはずです。

しかし、水蒸気が発生する調理器具の天井部分や、大型機械の裏側などになると、日々の掃除では手が届かないことから、カビの発生要因が放置されてしまっているケースが多いです。この他にも、天井裏に冷水や冷気が通る配管を通している施設などでは、配管が結露し、滴った水が天井についてカビが発生するといった事例の報告も多いです。食品工場では、このように、目に見えない位置でいつの間にかカビの繁殖が進んでいるというケースが多いので、カビ対策としては「カビが生えにくい施設を作る」ことが望ましいと言えます。

関連記事:Fact ism「食品工場のカビ対策について。そもそもカビの生えやすい場所とは?

食品工場のカビ対策について

それでは最後に、食品工場におけるカビ対策をご紹介します。ここでは、どのような場面でも使える一般的なカビ対策と、建材選びによって可能なカビ対策をご紹介します。

一般的なカビ対策について

上でご紹介したように、食品工場は、カビの成長条件である・温度・湿度(水分)・栄養源という3要素を全て兼ね備えています。したがって、カビの発生を抑制するには、これらの条件について、適切な対策を行う必要があります。

  • 温度、湿度の管理
    カビが成長できる条件は、基本的に「温度:0~40℃」「湿度:65%以上」ですが、食品工場内には、この条件を満たす場所が多くあります。したがって、カビが繁殖しやすい場所については、空調や除湿機などを用いて、適切な湿度の管理を行うのが重要です。
  • 小まめな清掃
    食品工場内には、カビの栄養源となるものがたくさんあるため、日々の清掃が非常に重要になります。特に注意しておきたいことは、エアコンなどの空調機器です。空調機器は、ホコリが溜まりやすいことから、カビの温床になります。ただ、それだけでなく、熱交換器が冷却されるときに結露が発生しやすいことから、水分が溜まりやすいという特徴があるため、カビの繁殖に好ましい湿度条件まで揃います。機器内部でカビが繁殖すると、空調を通じてカビの胞子が施設内にまき散らされます。そのため、空調は、内部まで小まめに清掃して、カビ対策を欠かさないようにしましょう。

工場建設時に行えるカビ対策

食品工場は、カビの繁殖に適した条件が揃っていることから、上記のような一般的な対策を行ったとしても、カビの発生を完全に防ぐことは難しいです。特に、天井裏に通される配管や、大型設備・冷蔵庫の裏側など、日常的な清掃が行き届かない場所でカビが発生することが多いです。また、食品工場では、製造エリアとそれ以外のエリアで気温差が生じることで結露が発生し、カビの発生を招いてしまうというケースも多いです。

ここでは、過去に実際にあった事例をもとに、工場建設時に考慮しておくべきカビ対策をご紹介します。

①天井換気扇で結露が発生

下の画像は、冬に一般環境の入室準備室で、天井換気扇の室内側で結露が発生していたという事例です。

原因を調べると、天井裏の空気が冷たく、天井換気扇の裏側が冷やされて、天井換気扇の室内側に触れている空気が露点温度以下になり、天井換気扇表面に結露が発生した事が分かりました。

入室準備室内は、空調機器により室温が暖められていましたが、天井裏はそのような温度調整などはなされていません。したがって、天井裏と入室準備室で気温差が生じ、両方の空気に触れる天井換気扇で結露が発生しました。改善策として、器具の天井裏側に断熱材を張り付け、器具が露点温度以下にならないようにすることで、結露の発生を防ぎました。

②ダクトで結露が発生

この事例は、室温3℃の1階製造エリアからつながる排気ダクトで、途中で3階の事務エリアを通過し、屋上の鳩小屋を経由して屋外へ排気していました。

排気ダクト内を通る排気の温度が非常に低いため、排気ダクトの周りをグラスウールで保温していました。(現在ではエアロフレックスが採用されています)ダクトに設置する保温材は、ただ巻き付けるだけではずり落ちるためピンで固定しますが3階部分のみが結露していました。

この事例では、固定用のピンとしてスチール製のピンが採用されていましたが、排気が非常に低い温度だったことでピンが冷やされ、3階部分の室温との温度差で結露しました。改善策として、スチール製のピンを樹脂製のピンに変更することで、ピンが低温になることを防ぎ、結露の発生を抑えました。

上記の二つの事例から分かるように、食品工場では、ほんのちょっとした建材の選び方によって、さまざまな場所で結露が発生します。また、結露は、さまざまな菌やゴミを含んだ不衛生な水滴であるため、これが食品に付着してしまうと食品事故につながるリスクが高まります。

こういったリスクを防ぐために、食品工場の建設段階の建材選びが非常に重要になります。そして、食品工場で結露やカビなどのトラブルを防ぐためには、製造エリアに断熱パネルを採用するのが望ましいです。最後に、断熱パネルを採用することで得られるメリットを簡単にご紹介します。

  • 断熱パネルは、工場で㎜単位に加工された材料を組んで設置するので、非常に高い気密性を実現します。
  • 断熱性能が高いので、外部や隣室の影響を受けません。
  • 水濡れにも強く、水洗いができますので、食品工場の壁・天井材に最適です。
  • 表面が平滑な仕様なので、汚れが付きにくく、汚れがついても清掃しやすいことで、常に衛生状態を保てます。

この他にも、断熱パネルは、鉄骨から吊り材を使って支えることができますので、キャットウォーク・歩廊が無くても、天井裏を直接歩くことが可能になります。食品工場などでは、配管や配線を製造エリア内に出してしまうと、そこにホコリなどが蓄積して、異物混入トラブルを引き起こすリスクが高くなります。そのため、天井裏の空間に配管や配線を通すのですが、断熱パネルを採用すれば、天井裏配管などの点検スペースも兼ねることができ非常に大きなメリットが得られます。一般のボード材を天井材として採用した場合、キャットウォークや歩廊を用意しなければ天井裏を歩くことはできません。

このように、食品工場は、「どの建材を採用するのか?」によって、衛生管理や施設メンテナンスの利便性が大きく変わります。
食品工場建設・建築に関するよくある質問はこちら

まとめ

今回は、食品工場におけるカビ問題について解説しました。皆さんもご存知のように、カビは、温度や湿度、栄養源という3つの要素が揃った場合、驚くスピードで繁殖します。そして、食品工場は、カビの繁殖に必要な3つの条件が揃いやすいため、注意していたとしても目に見えない場所でカビが発生している事例が多くみられます。

つまり、食品工場は、日々の作業でカビの対策を行う前に、「そもそもカビが発生しにくい施設を作る」ことが非常に重要になります。

この記事内でご紹介したように、断熱材を固定するピンの素材選びを間違っただけで結露が発生し、そこからカビの発生につながるという事例もありますので、工場設計段階での建材選びには注意しましょう。

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この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。