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食の安全・安心を守るゾーニング

ゾーニングとは?

ゾーニングとは、目的を持って区間や区域(ゾーン)を分けることをいいます。

ゾーニングの意味は業界や分野によって異なる意味を持っています。

例えば、建築やインテリアにおいては、プライベートスペース、パブリックスペース、共有スペースのように各部屋の使用用途を分けて配置することをゾーニングと言います。

他にも、都市計画、スーパー、オフィスなどにも使われます。

ゾーニングは、各業界・分野によって分けるものは異なりますが、何かしらの目的を持って区間や区域を分けることを意味します。

ゾーニングは食品工場の生命線

近年、ゾーニングという考え方は工場設計、特に食品工場の設計において、常識となっております。

 

「ゾーニング」とは、食品の安全性を確保するために、衛生レベルに応じた区画割りのこと。衛生区画(ゾーン)を明確にして、汚染を防止しながら、異なる汚染レベルを混在させず、異物混入や食中毒なども発生させないというものです。

食品の安全確保のための衛生管理手法「HACCP」を導入するにあたり、その導入準備として「一般衛生管理マニュアル」を整備します。そのマニュアルの中に「ゾーニング」が含まれています。

 

つまり、ゾーニングは食品の安全・安心を守る意味で、食品工場の生命線とも言えるでしょう。そこで今回はゾーニングが設計に及ぼす影響や、いかにして食の安全・安心を守るかについて紹介します。

 

ゾーニングされた区画の扱いと商品の流れ方

ゾーニングには以下の区画によって分かれています。

 

  • 清潔区域
  • 準清潔区域
  • 汚染区域
  • サニタリー区域

上記4つのゾーニングは食品工場の安全性を確保するためには必要不可欠な区域です。それぞれの区域についてご説明していきます。

 

□清潔区域

 

 

~危害を除去した後にその食材を包装しる充填前の場所です。落下細菌数30個以下で真菌数10個以下が目安になります。

人やモノを通して汚染区域から清潔区域に汚れや菌の持ち込みを防ぐ必要がある区域です。

そのため、衛生管理には細心の注意に払わなければなりません。

 

例)充填室、盛り付け室、包装室、殺菌後の仕掛品保管庫 等

 

□準清潔区域

 

~原料・資材由来の危害を除去する場所、食材が包装、充填された二次汚染のない場所です。落下細菌数50個以下が目安になります。

汚染区域から微生物などを清潔区域へ拡散しないために処置する区域です。

例)仕込み室、調味料調合室、殺菌前の仕掛品保管庫、洗浄後の容器保管庫、製品保管庫※1、開梱室※1、前室※1等

 

□汚染区域

 

~原料、資材由来の危害が存在する場所です。落下細菌数100個以下が目安になります。

外部との接触がある区域のため、交差汚染が考えられるのが汚染区域です。

汚染区域から直接清潔区域への移動はしないように、間に準清潔区域を挟むことで、交差汚染を防ぐ仕組みになっています。

例)入荷検品室、原料保管庫、廃棄物保管庫、下処理室、梱包室、仕分け室、出荷室、洗浄室、製品保管庫※2、開梱室※2、前室※2 等

 

□サニタリー区域

 

~生産に従事する人が専用に使用する場所

例)更衣室、入室準備室、従業員用便所、従業員用休憩室 等

 

この区画に応じて、食品関連の商品の流れは以下のようになります。

 

搬入(汚染区域)→野菜の入ったダンボールを開梱(汚染区域)→加工・調理など(準清潔区域)→冷却・パッキング(清潔区域)→梱包・冷蔵保管(準清潔区域)→出荷(汚染区域) 汚染区域から準清潔区域、そして清潔区域を経由して再び別の準清潔区域、汚染区域という流れが一般的です。また商品の流れる方向は一方通行を大原則として、混在汚染を防止します。

 

区分に応じた建築計画

作業工程とその衛生レベルに応じていくつかのゾーンに区切ることがゾーニング、ではありません。

徹底してゾーニングを行うには、その作業区分に応じた建築計画を立案していく必要があります。そのポイントは「床」と「空調関連」、そして「防虫・防鼠対策」です。

 

◆床

 

「準清潔区域」や「清潔区域」に関しては、毎日、床を清掃し、衛生環境を良好な状態に保ちます。そのため清掃を意識した床材を選択する必要があります。

最近では泡洗浄を実施する工場も増えているので、床は必ず濡れると考えた方が良いでしょう。その濡れた床が、翌日までに乾燥していなければいけませんので、水はけの良い床材を選択する、あるいは床自体に傾斜を付けて水はけを良くしておく工夫が必要となります。

また、ひび割れしにくい、耐久性のある素材を使うことも大切で、剥離した床材が異物として混入することも防止でき、ひびの中で細菌が繁殖するなどということも防止できます。

また、働きやすい環境も踏まえて、ノンスリップ加工などを施していると労災の発生も防げます。

 

◆空調関連

 

一般的には窓を開け、網戸を通して換気を行いますが、食品工場において窓を設置するのは、虫や動物の侵入経路を作るというリスクの元になるため、窓の設置は極力避ける傾向にあります。 つまり、食品工場における空調機器は異物混入を防止する上で非常に重要な「門番」の役目を担っています。

まず、空調と言えばダクト類が関係しますが、ダクト類は天井裏に通す設計を行います。それらに溜まった埃がなにかの拍子で落下し、加工している食品に混入してしまう恐れも有り得るからです。

そして、清潔度の優先順位が高ければ高いほど室内の空気の圧力を高めておく必要があります。これを「陽圧」といいます。

この「陽圧」は工場だけではなく、皆さんの身近な生活の中でも存在します。例えば、東京ドームに行かれた方で、入場する際に風に押し戻され、退場する際には風に押し出されたという経験をされた方はいませんでしょうか?無柱構造の東京ドームは空気の圧力を高めていることによって屋根を持ち上げているのです。

空気の圧力を高めるために、外から取り込んだ空気をヒートポンプにより気圧を高めて室内に送り込みます。作られた空気は「清潔区域」から「準清潔区域」へ流し込む際には、差圧ダンパーの設置により、空気の流れを「見える化」しておきます。陽圧により、清潔度の高いゾーンの空気圧を高めていくことで、外部からの異物侵入を防ぐことになるわけです。

こうした換気システムは目に見えないカーテンの役目となり、異物混入を未然に防ぐことに繋がります。

◆防虫・防鼠対策

これに関しては次の3つの考え方が柱となります。

 

  • 誘引源のコントロール
  • バリア機能
  • 室内での発生防止

防虫・防鼠対策において上記3つは非常に重要な考え方です。

それぞれについてご説明していきます。

 

1 誘引源のコントロール

 

光・臭い・熱などの虫や鼠を食品工場へ誘導させないための工夫

例えば、以下のような工夫をすることで、誘引源のコントロールをします。

  • ナトリウム灯の設置
  • 周辺の舗装、適切な緑化
  • 密閉された廃棄物庫

防虫・防鼠対策を食品工場へ誘導しない為にも、日々の厳しい管理をしていくことが重要です。

 

2 バリア機能

 

外部から侵入してくる虫や動物に対しての建築上で行うバリア機能

食品工場には、以下のようなバリア機能があります。

  • 出入口にエアカーテンや風除室設置
  • エアシャワーの設置
  • 虫返し・鼠返しの設置

その他にも仕切板の設置、手を使わずに開閉できるドア、衛生レベルの低い方にしか開かないドアなどによって異物を入れさせない・侵入させない工夫を施します。

 

3 室内での発生防止

 

室内での虫の発生を防止する

[例]

…など

  • 床接合部に丸みをつける
  • 木材の使用禁止
  • 溜枡を設置しない

 

外からは持ち込まない取り組みを行ったとしても、ゾーニングされた内部から危険因子が発生する環境を作ってしまっては意味がありません。ゴミを取り除きやすくする、虫が発生しやすい要因を排除することで内部要因を消しこんでいきます。

 

作業区画を区切るだけではなく、工場全体で虫や動物の侵入を防止することにより、工場内部の「ゾーニング」がさらに意味あるものとなっていきます。

 

持ち込まないためのゾーン・サニタリー区域

もう一つ、食品工場の設計において欠かせないのは、「サニタリー区域」です。

従業員の皆さんが更衣室や休憩室から工場内に入る際の緩衝場。ここで清潔な状態にして中に入らなければ、ゾーニングをした意味がなくなってしまいます。入室される方を清潔な状態にすることも重要です。

サニタリー区域では、上履きから作業靴に履き替え、ローラーをかけて髪の毛や埃を取り除きます。さらに非接触型の水栓で手を洗い、アルコール消毒器を実施しないと開かない扉があり、その先にエアシャワーが設置されている場合が多いです。「準清潔区域」、あるいは「清潔区域」に入る場合、必ずこのサニタリー区域を通過するような動線にしていかなければなりません。

ただし、ゾーニングを意識した設計にしても、運用上で気をつけなければならない、意外な盲点があります。それが手を洗った後、手を拭くものが釣りっぱなしのタオルだったり、フタ付きのゴミ箱があったりしてはせっかく洗った手を汚すことになりますので、注意してください。

 

ハード面だけではなく、ソフト面のゾーニングも。

設計段階からゾーニングの考え方を意識した工場にしていくことは非常に重要なことだと思います。しかし、ハード面は整ってもソフト面、つまり運用面もゾーニングのレベル感にあってこそ完璧な安全性が確保された食品工場となっていきます。

例えば、そこで働く従業員の制服(履物や帽子、手袋など含む)の扱い、パレットやドラム缶、ダンボールなどの持込可・不可など、備品類のゾーニングも重要です。

そういった細部にまで徹底してこそ、初めてゾーニングを実施した意味があるといえるのです。


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