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建築

投稿日:2022.07.07 
更新日:2022.09.28 

コロナ問題、ウクライナショックで建築コストの高騰

長引く新型コロナウイルス感染症問題により、人々の社会生活は大きく変化しています。日本国内でも、テレワークや在宅勤務と言われる働き方が一般的になっているなど、コロナ禍以前には浸透することが難しいと考えられていたものが普通に取り入れられるようになっています。

そしてコロナ問題の発生から2年以上が経過した現在、人々の日常生活に大きな影を落とす新たな問題が生じています。それは、さまざまな面に表れている物価の上昇です。例えば、私たちの日常生活に欠かせないガソリンについては、2020年5月時点と比較すると、1L当たり40円以上も値上がりしています。さらに、昨年秋ごろからは、さまざまな食品の値上げが続いていますし、ここにきて、電気代やガス代などの光熱費に関しても続々と値上げが発表されています。

もちろん、こういったさまざまな面での価格高騰は、新型コロナウイルス問題だけが原因なのではなく、ロシアによるウクライナ侵攻など、複雑な世界情勢が大きく関わっており、今後もさらなる価格高騰が続くのではないかと予測されています。
そして、さまざまな面での価格高騰は、建設コストの高騰や納期の不透明化など、建設業界にも非常に大きな影響を及ぼすようになっています。そこでこの記事では、これから倉庫や工場などの新設・リニューアルなどを検討している方に向け、建設業界で発生しているコスト高騰の要因についてご紹介します。

建設コスト高騰の要因

それでは、昨今、建設業界でも大きな悩みの種となっている建設コスト高騰の要因について、代表的なものをご紹介します。

中国のロックダウン

一つ目は、新型コロナウイルスを封じ込めるため、中国で行われたロックダウン政策の影響です。新型コロナウイルスの感染拡大防止は、人との接触を減らすということが非常に重要とされたことから、コロナ問題発生当初は、多くの国でロックダウンという非常に強い措置がとられました。日本でも、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが発出されたのは皆さんの記憶にも新しいのではないでしょうか。

ただ、新型コロナウイルスの特性がある程度解明されてきた現在では、多くの国で『WITH コロナ』政策がとられるようになり、行動制限を最低限にとどめながら新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐといった対策が行われるようになっています。しかし、中国では現在でも『ゼロコロナ政策』が維持されており、つい先日も上海市では2カ月以上にわたる厳格なロックダウンが実施され、注目を集めました。

そして、中国で維持されている『ゼロコロナ政策』は、日本の建設コスト高騰に大きな影響を与えています。というのも、日本で使用されるさまざまな工業製品は、中国で製造されているものが多いことから、中国でロックダウンなどが行われると、中国から輸入していた資機材などが品薄状態になり、物品価格が高騰してしまうのです。当然、物の価格が高騰すれば、それが建設コストに反映されてしまい、建設コストそのものを全体的に押し上げてしまいます。
帝国データバンクが行った調査によると、中国のロックダウンで『マイナスの影響がある』と回答した企業は48.4%に上り、以下のような意見を述べています。
 

・中国から部品が入らなくなったことで、国内メーカーが製品を製造できない状態が続き、他の部品もキャンセルしている(金属プレス製品製造、兵庫)
・1つの部品が足りないだけですべての生産が止まってしまう企業が多く、直接関係のない我々もそれに巻き込まれている(金型・同部品等製造、和歌山)
・半導体や部品などの輸入が滞ると、メーカーの売り上げ減少がおき、設備投資意欲が減退する(熱絶縁工事、大阪)
・中国から輸入する資機材などが品薄状態になることで物品価格の高騰を招き、購入意欲が弱まりそう(不動産代理・仲介、埼玉)
・直接の影響はないが、工事に必要な部品などが中国から入荷せず、工事の進行が遅れることで、当社の販売も遅れるという影響は出つつある(発泡軟質樹脂品製造、栃木)
引用:中国のロックダウン、国内企業の半数にマイナス影響 『卸売』『製造』を中心に悪影響

世界的な需要過多による建設資材価格の上昇

二つ目は、2020年のコロナショックによる需要急減から、一気に世界的な需要過多がおきてしまっている事が要因の建設資材価格の上昇です。

例えば、2021年前半頃より、『ウッドショック』という言葉を耳にする機会が増えていたと思うのですが、簡単に言うと、世界的に木材の需要が急激に高まったことで日本に輸入する木材の価格が高騰してしまった…または仕入れることができなくなってしまった…という問題を表しています。実際に、ウッドショックについては、経済産業省が昨年10月に「いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?」という特設ページを作るほど、日本国内の建設業界に大きな影響を与えています。

ちなみにウッドショックは、戸建て住宅業界にも大きな影響を与えていることから、テレビなどの大手メディアなどでも取り上げられていますが、実は倉庫や工場など、大規模施設に関わる建設業界では、『アイアンショック』と呼ばれる鋼材価格の急激な高騰の影響も大きく受けています。実際に、鉄骨などの鋼材価格は、2021年に入り急激な高騰を見せ始め、2022年5月の鉄筋価格は124,000(円/t)と、過去最も高い水準であった2008年と比較しても1万円以上も上回る水準となっています。

こういった木材や鋼材の価格高騰は、世界各国でWithコロナ政策がとられるようになり、急激に需要が増大したことで、物流網が大混乱に陥っていることも大きな要因と考えられます。さらに現在では、ロシア・ウクライナショックが発生するなど、世界情勢が非常に不安定な状況になっていることから、木材や鋼材価格の先行きはさらに不透明になっていると言われています。

参考:高騰する鋼材価格の動向|建設市場レポート 2022年7月版

ウクライナショックによる今後

最後は、現在も続いているウクライナショックの影響です。皆さんの記憶にも新しいと思うのですが、2022年2月末、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、世界中が衝撃を受けました。そして、このウクライナ侵攻は、この記事を作成している2022年7月時点でも続いており、世界中にさまざまな影響を与えるようになっています。
というのも、ロシアによるウクライナ侵攻が行われたことで、日本を含めた欧米各国では、ロシアに対してさまざまな経済制裁を下すことを決めています。これにより、多くのロシア企業が国際取引が不能な状態に陥ってしまっているのですが、これが建築コスト高騰の大きな要因になっています。

ロシアは、世界的に見ても、木材、天然ガス、石油などの輸出大国となっており、さまざまな面で非常に重要なポジションを占めている国だからです。例えば、木材や天然ガスについては、その輸出量について世界でトップに位置するのがロシアです。石油についても、アメリカやサウジアラビアに次ぐ、世界第3位に位置するとされています。(2020年時点)
つまり、これほどさまざまな資源の輸出大国であるロシアに対して、経済制裁を行っている現在、需要と供給のバランスから、木材やエネルギー価格が急騰してしまい、それが建築コストの上昇として現れているわけです。

更に、ロシア・ウクライナショックについては、2022年7月現在でも、その終結の見通しすら立っていないのが実情です。そのため、今後さらにロシアへの経済制裁が長期化すると予想されており、世界中でさらなる木材・エネルギーの需給ひっ迫が起こり、価格が上昇するのではないかと予想されています。

まとめ

今回は、昨今の建設コストの高騰について、なぜ建設コストが高騰しているのかについて考えてきました。この記事でご紹介したように、現在発生している建設コスト高騰は、新型コロナウイルスによるパンデミックが非常に大きな要因になっています。さらに2022年に入ってからは、ロシアによるウクライナ侵攻が発生するなど、世界情勢の急速な変化が世界中の物価上昇を引き起こしていると言われています。

なお、日本の建築コスト上昇については、上述した新型コロナウイルス問題やウクライナショック以外にも、そもそも建設業界の高齢化や人手不足などが大きな要因だと考えられます。建設業における就業者数は、最も多かった1997年の685万人から2021年の482万人まで、約30%も減少しており、慢性的な人手不足状態に陥っていると言われています。そのため、この問題を解消するために、建設業界では積極的な働き方改革が進められるようになっています。しかしその一方で、現場を回すための人員を確保するために余計なコストがかかってしまうなどという問題に発展し、建築コストを押し上げているわけです。

ちなみに、この記事では、木材や鋼材などの価格高騰による建築コストの上昇に注目していますが、実は建築資材の価格高騰に合わせて、納期の長期化も問題になっています。例えば、鋼材価格はこの1年で約1.5倍にまで高騰していますが、納期については2倍にまで伸びてしまうケースがあると言われています。つまり、現在の建築業界は、建築コストが高騰しているだけでなく、同じ建物を建てるにしても、工期が長くなってしまうという状況になっており、今後は、お金を出しても仕入れることができないなどという最悪の事態も想定しておかなければならないと言われています。

こういった状況から、三和建設では、工場や倉庫の新築や増改築についても早めのご相談をお勧めしております。

この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。