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投稿日:2023.04.27 

工場の省エネを目的とした設備投資。当面は太陽光一択!?

工場の省エネを目的とした設備投資。当面は太陽光一択!?

2023年4月1日に施行された改正省エネ法において、大量のエネルギーを必要とする工場などは、対応が求められるため注意が必要です。

そこで当記事では、改正省エネ法の概要や、2023年4月の改正法施行で何が変わり、工場などの事業者はどのような対応をしなければならないのかを分かりやすく解説していきます。

 

そもそも省エネ法とは

省エネ法の正式名称は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」です。昭和54年にオイルショックを契機として以下の目的で制定されました。

内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資するため、工場等、輸送、建築物及び機械器具等についてのエネルギーの使用の合理化に関する所要の措置、電気の需要の平準化に関する所要の措置その他エネルギーの使用の合理化等を総合的に進めるために必要な措置を講ずることとし、もって国民経済の健全な発展に寄与すること
引用:資源エネルギー庁公式サイトより

この法律は、オイルショックのようなエネルギー危機が発生したとしても、経済が止まらない仕組みづくりが必要と考えられ、「エネルギーのムダ使いを規制する」ために制定されました。「経済活動の継続」が制定当初の主な目的でしたが、1990年代に入り、世界中で地球温暖化が問題視されるようになったことから、CO2排出量削減に有効な手段としての役割も担うことになりました。実際に、法律が制定された1979年から2018年までに、8回もの法改正が繰り返されています。

そして、2022年3月1日に「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、2023年4月1日より、改正省エネ法が施行されることとなっています。

今回の法改正に伴って、法律の名称も「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に改正されました。

省エネ法の対象となるエネルギー

省エネ法で規制対象となるエネルギーは、「燃料」「熱」「電気」の3つです。逆に、廃棄物からの回収エネルギーや風力、太陽光等の非化石エネルギー(再生可能エネルギー)は対象外とされています。

それぞれのエネルギーについて、以下で具体例をご紹介します。

燃料 ・原油及び揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品(ナフサ、灯油、軽油、石油アスファルト、石油コークス、石油ガス)

・可燃性天然ガス

・石炭及びコークス、その他石炭製品(コールタール、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)であって、燃焼その他の用途(燃料電池による発電)に供するもの

・上記に示す燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水等)

対象とならないもの : 太陽熱及び地熱など、上記の燃料を熱源としない熱のみであることが特定できる場合の熱

電気 ・上記に示す燃料を起源とする電気

対象とならないもの : 太陽光発電、風力発電、廃棄物発電など、上記燃料を起源としない電気のみであることが特定できる場合の電気

参照:資源エネルギー庁公式サイト

省エネ法が規制する分野・対象の特定事業者

省エネ法が規制する分野・対象の特定事業者
引用:省エネ法の概要より

省エネ法には、『①エネルギー使用者への「直接規制」』と『②エネルギー使用者への「間接規制」』の2つの規制があります。

省エネ法がエネルギー使用者へ直接規制する事業分野としては、工場・事業場及び運輸分野があります。工場等(工場又は事務所その他の事業場)の設置者や輸送事業者・荷主に対しては、省エネへの取組を実施する際の目安となるべき判断基準を示すとともに計画の作成指示などを行います。さらに、一定規模以上の事業者に対してはエネルギー使用状況の報告を義務付けており、取組が不十分な場合には指導・助言や合理化計画の作成指示などが行われます。

エネルギー使用者への間接規制は、機械器具など(自動車、家電製品や建材など)の製造又は輸入事業者が対象です。対象事業者は、機械器具などのエネルギー消費効率の目標を示して達成を求めるとともに、効率向上が不十分な場合には勧告などが行われます。

省エネ法への対応と課題について

改正が行われた2023年4月からは、工場など多くのエネルギーを使用する事業者には、以下の対応が求められています。

 非化石エネルギーへの転換の促進
• 工場等で使用するエネルギーについて、化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換(非化石エネルギーの使用割合の向上)を求める
• 一定規模以上の事業者に対して、非化石エネルギーへの転換に関する中長期的な計画の作成を求める
引用:経済産業省資料より

近年、日本国内でもカーボンニュートラル実現のため、再生可能エネルギーの導入が促進されています。工場や倉庫などの大型施設では、広大な面積を持つ屋根部分に太陽光パネルを設置する事業者が多くなっていますが、太陽光発電以外の技術への注目度も高くなっています。
ただ、従来の発電技術と比較した場合、再生可能エネルギーには多くの課題が存在すると言われています。ここでは、工場などが省エネ法への対応のため再生可能エネルギーの導入を検討した時、注意しなければならない課題を解説します。

風力発電の現状と課題

風力発電は、風の力を利用して風車を回し、発電機を通じて風車の回転運動を電気に変換する発電方法です。風力発電のメリットは、一定の風速があれば、昼夜を問わず電力を生み出すことができる発電方法であるという点です。例えば、日本国内での再生可能エネルギーの主力を担っている太陽光発電は、日射(光エネルギー)を直接電気エネルギーに変換して活用する方法のため、夜間や悪天候時は電気を作ることができません。
風力発電は、「風」という自然のエネルギーを利用するため、資源枯渇の恐れがなく、排気ガスやCO2、燃えかすが発生せず、使用済み燃料の処理も不要で地球環境に優しい安全でクリーンなエネルギーです。なお、風力発電は、ある程度の強い風が安定して吹く状況が好ましいため、近年では陸上ではなく洋上での風力発電の開発が活発化しています。

一方で、いくつかの課題が指摘されています。

 

風力発電の課題

  • 強すぎる風を受けると故障の可能性がある
    日本ならではの風力発電の課題が、台風などの強すぎる風の問題です。風力発電は、風が吹くことで発電するのですが、台風のような強すぎる風であると、発電設備が破損する恐れがあります。近年では、台風の大型化が問題視されており、台風による被害が多い日本では、どうしても風力発電設備の故障リスクが高くなる点が課題です。
  • 電力の「安定供給」という面で弱い
    風力発電は、自然の風を利用する発電方式です。したがって、風向きや風速に発電量が左右されることになり、電力を毎日一定量供給するという「安定性」の面では弱いです。年間を通じて強い風が吹く場所でないと、発電効率が悪くなるため、風力発電の建設場所が限られるのが課題です。
  • 維持運営にコストがかかる
    風力発電機は、10,000点以上の部品が使われています。安定した発電を行うためには、風力発電設備が正常に動作する必要があるため、日々の点検で故障のリスクを最小限にしなければいけません。そのため、風力発電の運用では、設備の保守、維持管理に多大なコストがかかります。なお、現在の風力発電機は、多くの部品を輸入に頼っていることから、故障が起きると修理まで時間がかかる点も課題となります。風力発電機を安定的に稼動させるためには、海外製の部品が多いため、サプライチェーンの問題を解消しなければならないとされています。
  • 風力発電機の処分時にもコストがかかる
    発電機本体が非常に巨大な風力発電機は、処分をする際にも多額のコストがかかります。風車の設計寿命は約 20 年とされていますが、風力発電機には多くの部品や部材が使用されています。近年ではそれらをリサイクルする動きも活発になっており、風力発電機の中古部品・部材のリユース品として販売する事や完全リサイクル化を目指す企業も出てきています。

風力発電は、環境負荷が少ないクリーンエネルギーのひとつとして注目されており、日本でも1997年度に開始された設備導入支援や2003年度のRPS法の施行などで、徐々に導入量が増えています。しかし、上述のような課題が山積していることもあり、2020年末時点で、日本で生産されているエネルギー全体のうち、風力発電は1%にも満たない割合となっています。

現状、風力発電は、台風が多い日本の環境下では、故障リスクが高いという問題がある上に、安定的な電力供給を考えると、洋上での風力発電が必要となり、一企業が省エネ法への対応として導入するには、初期コスト・ランニングコスト両方の面で、かなり難易度が高いと考えられます。

参照:資源エネルギー庁公式サイト

太陽光発電の現状と課題

太陽光発電は、地球に降り注ぐ太陽光エネルギーを電気に変換する発電方法で、環境負荷の低い再生可能エネルギーを利用するため、風力発電や水力発電と並ぶ次世代の主力電源として期待されています。日本国内では、2012年に開始されたFIT制度により、2012年から2019年までの日本国内での導入量は10倍近くになりました。実際、2020年の太陽光発電の導入量を見ると、日本は世界第3位に位置するなど、世界有数の太陽光発電導入国となっています。

そして、工場での再生可能エネルギーの採用率を考えると、やはり太陽光発電設備の導入が主流となっています。ただし、太陽光発電設備は、「太陽光エネルギーを電気に変換する発電方法」であるため、日射のない夜間や悪天候時には発電することができないなど、電力の安定供給の面で大きな課題を抱えています。例えば、24時間体制で稼働する工場などの場合、夜間に発電できない太陽光発電設備では、工場の稼働に必要になる電力全てを賄うことはできません。近年では、昼間に発電した電力を貯めておくための蓄電池の開発が進んでいますが、蓄電池も性能面ではまだまだ課題が多いとされています。

太陽光発電は、工場でも既に導入実績が多くなっていますが、以下のような課題は現在でも解決できていないとされています。
 

太陽光発電の課題

  • 発電量が不安定
    太陽光発電は、太陽光が照射されている時に発電します。逆に言えば、夜間や悪天候、陰になる時間帯など、日射が無い時には発電することができません。太陽光発電の長年の課題は、発電量が周辺環境や天候、時間帯などで大きく左右されるという不安定さです。
  • メンテナンスが不可欠
    太陽光発電は、メンテナンスが必要不可欠な点も課題とされています。例えば、パネル表面が汚れてしまうだけでも発電効率が低下する恐れがありますし、最悪の場合、故障する可能性があります。工場などに導入する太陽光発電は、面積が大きくなる分、メンテナンスコストなどが高額になると考えられます。
  • 耐用年数を超えたパネルの処分
    太陽光発電設備の耐久性は、年々向上していると言われています。しかし、現状では約20年程度が寿命と言われているため、いずれ老朽化した太陽光パネルの撤去、処分が必要になります。そして、太陽光発電は、パネルの処分費が高額だという点が現在、大きな課題とされています。

太陽光発電設備は、上記のような課題があるものの、上で紹介した風力発電と比較した場合、その導入難易度はかなり低くなります。特に、工場は広い屋根面積が確保できるため

、本来デッドスペースとなりがちな屋根を発電に利用することができると考えると、メリット面の方が大きいのではないかと考えられます。

参照資料:資源エネルギー庁「太陽光発電について

 

蓄電できれば再生可能エネルギーはより活きる

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、環境負荷が少ないクリーンエネルギーとして、カーボンニュートラルの達成には欠かすことができない技術だと言えます。しかし、太陽光発電や風力発電には、発電量が季節や天候などに左右されることから、コントロールすることが非常に難しいという共通の課題が存在します。

太陽光発電は、日射が無い夜間や悪天候時は発電できませんし、風力発電も風が弱いもしくは強すぎる場合には発電できません。そのため、電力の需要に即応して供給するということが難しい場面があるという非常に大きなデメリットが存在します。そこで、再生可能エネルギーをより活用するために期待されているのが、余剰電力を貯めておくことができる蓄電池の存在です。

現状は、携帯電話やノートパソコンのバッテリーとして活用されている、リチウムイオン電池を採用した蓄電池が主流となっていますが、このタイプは「電力の長期保存や短時間での蓄電」が課題となっており、この課題を解消できる次世代型蓄電池として「レドックスフロー電池」や「グリッドスケール蓄電池」という技術が注目されています。

なお、レドックスフロー電池は、日本国内でも生産が検討されています。

 

まとめ

省エネ法の改正は、過去に何度も行われていますが、今回の改正では、法律名が「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に改正されるなど、工場などは化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換(非化石エネルギーの使用割合の向上)が強く求められることになりました。

近年では、工場の広大な屋根を活用するため、太陽光発電設備の導入を行う企業が増えています。しかし、太陽光発電は、日射のない夜間や悪天候時には発電することができないため、再生可能エネルギーの安定活用を実現するためには、蓄電池を導入することで蓄電し、工場のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を目指すのが良いでしょう。
また近年では、地熱を活用した省エネに効果的な取り組みも見かけるようになりました。。例えば、地熱を活用して、温度や水音を安定化し、効果的に既存の空調や冷却システムを活用することで圧倒的な省エネが実現出来る工場を目指す事も可能であると考えます。

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、さまざまなクリーンエネルギー技術や蓄電技術の開発が進んでいるため、自社の省エネを効果的に進めるためにも、最新技術の情報には常に目を向けましょう。

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この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。