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投稿日:2023.12.20 
更新日:2024.01.05 

食品工場でカビ被害を防ぐための設計計画3 つのポイント

カビ被害を防ぐための設計計画
 

今回は、食品工場におけるカビ対策のポイントについて解説します。総菜や菓子、保存性の良いレトルト食品など、私たちの食生活を支えてくれている食品工場は、人が口に入れるものを製造するという観点から、衛生面でさまざまな工夫が施されています。

しかし、食品工場は、製造過程で湿気・熱が発生し、また食品そのものに養分があることから、カビが発生・繁殖を非常にしやすい条件が整っています。

そこで当記事では、食品工場でカビ被害を防ぐためにおさえておくべきポイントをご紹介します。

 

カビが繁殖する条件と食品工場にカビが与える影響について

カビの繁殖に適している条件と、食品工場内でカビが発生した場合、どのような影響が考えられるのかについて解説します。

 

カビが繁殖する条件とは

食品工場は、製造過程で湿度や熱が発生する上、カビの養分となるものが多く存在することから、カビの繁殖に非常に適していると言われています。それでは、カビの発生、繁殖に適した条件とはどのような条件なのでしょうか?一般的に、カビは以下の条件下で生育すると言われています。

  • 酸素が存在する(低酸素で発育可能な真菌も存在する)
  • 温度が20〜30℃※1
  • 湿度70~80%以上
  • 栄養源がある

これからも分かるように、食品工場の中で、結露が発生しているような環境は、カビの生育に非常に適した環境と言えます。逆に言えば、温度・湿度の管理がなされている環境下では、カビの発生、繁殖を防ぐことができます。

空気中には、カビの胞子・菌糸がどこにでも漂っており、食品に付着します。そして、温度・湿度管理がなされておらず、カビの生育条件が整った環境では、食品を栄養としてカビが繁殖します。そして、カビが発生した食品から新たな胞子を発生させ、ねずみ算的に増殖し、一気にカビ被害が拡散していきます。

※1

カビの中には-5℃から発育可能な種が存在し、80℃で30分程度加熱したとしても死滅しない種も発見されています。

 

食品工場にカビが与える影響とは

カビの繁殖条件を確認してみると、食品工場は全ての条件を兼ね備えた環境になると言えるでしょう。カビは、温度・湿度・栄養の3つの条件が揃うと発生する可能性が高くなるのですが、食品工場内でカビ被害が発生した場合、さまざまな影響が出ると考えられます。

例えば、カビは食品の味や匂いを変えたり、腐らせたりします。さらに恐ろしいのは、カビの中には、食中毒やがんの原因となる毒を生産するものがいたり、アレルギー症状の原因となるカビもある点です。食品工場内で、カビ被害が発生した時には、以下のような問題に発展する可能性があります。

 

  • カビによる異物混入などの食品事故が発生する
  • 製造した食品を口にしたお客様に食中毒などの健康被害がでる
  • 工場内で働く従業員の健康被害が発生する(アレルギーや真菌感染症など)

食品工場内でカビが繁殖すると、そこで働く従業員についても、アレルギーや真菌感染症など、健康被害に発展する恐れがあります。さらに、出荷した製品による食品事故が発生した場合、製品回収などの深刻な問題につながり、企業の信頼を損なう大問題にまで発展する可能性があります。

食品工場では、さまざまな製品が製造されていますが、中でもパンやお餅、ケーキなど、でんぷんや糖分を含んだ食品は特にカビが発生しやすいため、これらの食品を取り扱う工場は特に注意が必要です。

 

カビの被害を防ぐ方法

食品工場におけるカビ対策について解説します。食品におけるカビ対策では、食中毒菌などの微生物制御の3原則「つけない」・「増やさない」・「やっつける」が基本となります。ただし、カビの生態的な特徴から、細菌などとは対策のポイントが微妙に異なる部分もあります。

ここでは、食品工場の建設計画や改修計画の時点で検討しておきたいカビ対策を中心に解説します。

 

ポイント① カビを「つけない」

食品工場には、カビが繁殖しやすい場所が多く存在しますので、目に見える範囲は、日々の清掃を行うことでカビを発生させないように注意しているはずです。しかし、食品工場の中には、目に見えない部分、手の届かない部分などにカビが発生しやすいポイントが多いため、カビ対策としては「カビが生えにくい施設を作る」ことが重要と言えます。

例えば、以下のような点に注意すると良いでしょう。

  • 清掃しやすい仕上げ材料を選定する
    食品工場内の”湿度が上がりやすいエリア”は、壁・天井の仕上げ材料を、極力カビが付着しにくく、洗浄しやすいパネルを選定すべきです
  • 壁・天井の表面に防カビ処置を施す
    カビが発生しやすいエリアの壁や天井は、表面に防カビ処置を施すことで、カビの発生を防止することができます。例えば、表面に二酸化チタンを含んだ材料を塗布するという方法があります。二酸化チタンは、室内蛍光灯の光をあてられることでプラスに帯電し、有機物を酸化させることでカビの付着を防ぎます

食品工場は、建設・改修計画の時点で、「カビが発生しにくい施設を作る」という視点を持っておくことが非常に重要です。なお、食品工場建設時のカビ対策については、以前、別の記事で詳しく解説していますので、以下の記事も確認してください。

関連:食品工場のカビ対策!建材の選び方でここまで変わる

 

ポイント② カビを「増やさない」

食品工場におけるカビ対策では、カビを「増やさない」という視点を持つことも大切です。カビは、繁殖に適した条件がある一方、弱点やコントロール方法もあります。例えば、カビは「熱に弱い」「乾燥に弱い」「低温環境に弱い」などの特徴を抑えておけば、食品工場内全体にカビが広がることを防ぐことができます。

食品工場で、カビを「増やさない」ためには、以下のようなポイントに注意すると良いでしょう。
 

  • 除湿を行う
    カビは、湿度43%以下の環境を毎日3時間以上保つことでカビの増殖を防ぐことが出来るという研究データがあります。工場稼働時に、低湿状態を維持することは難しいですが、稼働終了後から翌朝の稼働開始までは湿度を落とすと良いです。その日の生産を終え、清掃終了後は、換気や空調設備を利用して低湿状態を保てるようにすると良いでしょう。湿度が下がりきらない場合は、除湿機なども併用し、カビが生育しにくい湿度環境を保つようにしましょう
  • 蒸気の拡散を防ぐ
    食品工場内でも、調理窯の上部などから大量の蒸気が発生します。そして「カビを増やさない」ためには、発生した蒸気が別の場所に拡散しないようにしなければいけません。広い範囲に蒸気の拡散があるようであれば、パネルで間仕切りを設け、拡散する前に蒸気を排出できるような構造にしましょう
  • 調湿を行う
    食品工場の構造によっては、床下や天井裏など、目に見えないところの湿度が高くなりカビが発生することがあります。見えない位置でカビが発生すると、気付かないうちに広範囲にカビが拡散する恐れがありますので、湿度が高くなる可能性がある場所は、調湿材などを設置して湿度をコントロールしましょう

 

ポイント3 カビを「やっつける」

カビは、どれだけ慎重に対策を施していても、発生を完全に防ぐのは難しいです。したがって、発生したカビを早期に発見し、「やっつける」ことができるようにすることも大切です。

  • 壁・天井の表面に殺菌処置を施す
    カビの繁殖に適した条件が整っている食品工場などは、壁や天井の表面に殺菌処置を施すと良いです。例えば、壁、天井の表面に、銀の粉末を含んだ材料を塗布することで、防カビ効果を持たせることができるものもあります
  • こまめな清掃を行う
    食品工場でのカビ対策では、普段は目につかない場所も定期的に清掃を行うことが大切です。例えば、分電盤やロッカーの上など、埃が積もりやすい場所の清掃を怠ると、埃が吸湿しカビの温床となる恐れがあります
  • カビを除去する
    工場内でカビを見つけた時には、すぐに除去することが大切です。なお、カビは拭き取るだけでは完全に除去することはできません。カビの除去は「徐カビ剤でカビを除去⇒殺菌剤でカビ以外の菌を除去⇒防カビ剤でカビを防止」の順で行いましょう

 

ポイント④ 【番外編】カビの汚染経路を明確にして対策する

食品工場におけるカビ対策は、上で紹介した「つけない」・「増やさない」・「やっつける」の3原則が基本となります。ただ、これに加えて行っておきたいのが、カビの汚染経路を確認するという対策です。

製造現場でカビが発生した際には、汚染経路を明確にすることで、その後のカビ被害を防ぐことができるかもしれません。ここでは、食品工場におけるカビの汚染経路と、そこからカビを発生させないための対策を簡単に解説します。

カビの汚染経路

食品工場の製造エリアにカビが侵入する汚染経路として考えられるのは以下のようなケースです。

  • 原材料の汚染
    原材料に泥が付着している、土壌由来のカビに汚染されている、包装資材に汚れが付着したまま持ち込まれた
  • 空中に浮遊するカビによる汚染
    カビに汚染された原料粉や埃が空気中に飛散している
  • 調理器材、作業員の手指を介した汚染
    作業員の手洗いが不十分であった
  • 昆虫の侵入による汚染
    昆虫に付着していたカビにより汚染される

食品工場では、適切なカビ対策を行っていたとしても、上記のような汚染経路でカビが発生してしまう可能性があります。したがって、製造エリアでカビを発見した時には、「どこからカビが発生したのか?」を確認し、その汚染経路をきちんと塞ぐことも大切です。

例えば、それぞれの汚染経路については、以下のような対策が考えられます。

  • 原材料、外装(袋、箱)の汚れについて
    原材料や外装の汚れは、製造エリアに持ち込む前に取り除く
  • 汚れた手で食品に触れている
    食品に直接触れる人員については、定期的な手袋交換、こまめな手洗い、アルコール消毒を徹底させる
  • 空中に浮遊するカビについて
    エアコンの内部フィルターや吹き出し口を定期的に掃除する
  • 汚染区、準清潔区、清潔区の区分けについて
    清潔区へは直接汚染区からの移動ができないような導線を確保し、パーテーションやドアなどで仕切る
  • 風の流れついて
    屋外から屋内への風の流れがないか確認する。屋内が陰圧になっていると、汚れた空気が流入する恐れがあります
  • 汚れた靴で製造エリアに入らない
    製造エリアで使用する靴で屋外に出ないようにする

 

まとめ

今回は、食品工場におけるカビ対策を解説しました。記事内でご紹介したように、カビ対策では、「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つが鉄則で、カビが発生してから「やっつける」という対処をすることも可能です。

しかし、人が口にする食品を製造する食品工場では、より安全で清潔な環境を保つために、「つけない」「増やさない」という部分の対策が非常に重要です。食品工場の建設や改修計画の初期段階で、カビ対策について慎重に検討することで、より効果的な対策が施せるようになります。

カビ対策は、特別な知識が必要となるため、食品工場の改修や建設を計画する際は専門知識と、多くの施工実績を持つファクタスに、ぜひご相談ください。

 

この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。