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投稿日:2021.12.10 
更新日:2022.09.26 

食品産業で始まっているクリーンエネルギーへの取り組み!食品廃棄物からクリーンなエネルギーを!

近年、テレビや雑誌で耳にする機会が増えてきたSDGsですが、SDGsで掲げられている17の目標についてもう少し詳しく知りたいと思っている方は多いでしょう。特に食品産業は、SDGsと非常に関係が深い業界と考えられており、SDGsに関する取り組みをスタートしている企業が非常に多いです。

この記事では、SDGsが掲げているの目標の中でも「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」という目標について、食品産業でどのような取り組みが行われているのかを簡単にご紹介していきます。

「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」

それではまず、SDGsの7つ目の目標に掲げられている「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」について、具体的に何を目指す目標なのかについて簡単に解説しておきます。なお、農林水産省では、この目標について以下のように解説しています。

目標7 : すべての人が、安くて安全で現代的なエネルギーをずっと利用できるようにしよう
この目標は、国際協力の強化や、クリーンエネルギーに関するインフラと技術の拡大などを通じ、エネルギーへのアクセス拡大と、再生可能エネルギーの使用増大を推進しようとするものです。
引用:農林水産省公式サイト

なお、SDGsでは、17の目標に対してそれぞれ具体的なターゲットを示しています。目標7のターゲットは以下のように設定されています。

SDGs目標7のターゲット

7.1 2030 年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
7.a 2030 年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
7.b 2030 年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。
参照:我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(外務省仮訳)

※SDGsのターゲットは、具体的な行動指針のようなものです。上記のように「目標番号.●」と言った表示をされているのですが、「●」に入るのが数字の場合は、「これを達成させましょう」という意味の具体的な課題となります。そして「●」にアルファベットが入る場合は、課題を達成するための手段となっています。

 

SDGs目標7のポイントについて

それでは、SDGs目標7のターゲットについて、もう少し詳しくご紹介しておきます。SDGs目標7における大切なポイントは以下の3つになります。

  1. 全ての人が電気を使える環境を整える
  2. 再生可能エネルギーを活用
  3. 地球に負荷を与えないエネルギー利用技術を向上させる

それぞれのポイントについてもう少し見ていきましょう。

 

全ての人が電気を使える環境を整える

日本国内に住んでいれば、「誰でも電気は使えるのでは?」という印象を持ってしまうことでしょう。しかし、世界全体に目を向けると、2018年時点でも約8.6億人の人が電気を使えずに生活していると言われています。そして、電気が使えないほとんどの地域は、貧困世帯が多い途上国の農村です。

電気の普及が無い場合、「教育を受ける環境が整わない」「農作物や漁業の収穫物の加工施設が成熟せず、産業の発展が難しい」など、貧困から抜け出すために必要な行動すら起こせなくなってしまいます。したがって、SDGsでは、世界中の誰もが電気を使える環境にしていく必要があるとしています。

再生可能エネルギーを活用

これは改めて説明する必要はないかもしれませんね。日本国内でも、環境負荷の少ない再生可能エネルギーの活用が求められています。再生可能エネルギーは、『枯渇しない・どこにでもある・CO2を増加させない』と言ったメリットが注目されており、SDGsが目指す持続可能な社会の構築には欠かせないエネルギーとなります。

なお、再生可能エネルギーと聞けば太陽光発電や風力発電をイメージする方が多いですが、他にも地熱や後述するバイオマス発電が注目されています。SDGs目標7では、こういった再生可能エネルギーを世界中で活用していくことを求めています。

地球に負荷を与えないエネルギー利用技術を向上させる

再生可能エネルギーは、『枯渇しない・どこにでもある・CO2を増加させない』と言ったメリット面ばかりが注目されますが、まだまだ課題が多く残されていると言われています。例えば、太陽光発電などは、悪天候時は発電できない、季節によって発電量が低下してしまうなど、エネルギーの供給量が不安定になってしまう問題が指摘されています。そして、再生可能エネルギーで大量の発電量を確保するためには、巨大な設備が必要になります。

例えば、発電量を確保するために、森林伐採が行われ生態系に悪影響が出たり、途上国の人々が住む場所を追われてしまうなどと言ったことになれば、とても持続可能な社会とは言えないはずです。こういったことから、再生可能エネルギーをより効率よく利用できるような技術向上を目指すことが大切とされています。

食品関連業界ではバイオマス発電が注目されている

ここまでは、SDGsの7個目の目標となるエネルギー関係についてご紹介してきました。日本国内では、再生可能エネルギーと言えば太陽光発電というイメージが強いと思います。しかし近年、食品関連事業者の間ではバイオマス発電が注目されるようになっています。
これは、上述したように、太陽光発電は「エネルギーの供給が不安定である」という課題があるからです。例えば、日本で太陽光発電を行う場合、梅雨時期になると十分な発電量が確保できなくなりますし、夏と冬では日照時間の関係で発電量が大幅に変わってしまいます。

そこで、新たな再生可能エネルギーと注目されているのが『バイオマス』です。バイオマスは、簡単に説明すると、動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるものを指すのですが、経済産業省資源エネルギー庁のインタビュー記事に分かりやすい説明があったので、以下でご紹介しておきます。

「バイオマス」というと、木質系の残材や食品残渣(廃棄物)のことを思い浮かべる人が一般的でしょう。しかし、それだけではありません。「バイオマス」とは本来、生物資源(Bio)の量(Mass)を示す概念。そこから転じて、生物由来の有機的な資源のうち、化石資源を除いたものを指します。木や果物のような植物だけが「バイオマス」ではなく、それを食べる動物も「バイオマス」です。陸上だけでなく海の生物、植物プランクトンや海藻、またそれらを食べる魚などもそうです。つまり、地球上の生命体すべてがバイオマスなのです。
引用:経済産業省資源エネルギー庁インタビュー記事

このことからも分かるように、『バイオマス』とは、使い続けるといずれなくなってしまう化石資源以外のありとあらゆる生命体が資源として活用できるものです。そして、バイオマスやその生成物を燃料として用いた発電方式のことをバイオマス発電と言い、食品廃棄物からクリーンなエネルギーを作り出すことができるということから食品関連業界で注目されているわけです。

なお、バイオマス発電にもいくつかの発電手法がありますので、以下で簡単にご紹介しておきます。

  • 熱分解ガス化方式
    熱分解ガス化方式は、バイオマス資源を熱処理して、発生した可燃ガスを使用しエンジンを駆動して発電するものです。
  • 生物化学的ガス化方式
    生物化学的ガス化方式は、バイオマス資源を微生物発酵させ、可燃ガスを取り出して、それを発電に利用するという方式です。メタン発酵とも呼ばれますが、家畜の糞尿や食品残渣など、水分が多いものが用いられることになります。水分が多く含まれる物質の場合、他の方式では加熱時のロスが大きくなり非効率だと考えられているからです。
  • 直接燃焼方式
    これは、通常の石炭火力発電と同じような方式です。つまり、バイオマスをそのまま燃やし、エネルギーを取り出すという発電方式になります。

なお、バイオマス発電については、火力発電と同じく「燃料を燃やしてエネルギーを得る」という方式となることから、「CO2が発生するのでは?」と疑問に思う方も多いと思います。確かに、バイオマスを活用する場合でも、燃焼させればCO2が発生するのですが、化石燃料とは異なり「カーボンニュートラル」という考え方があることから、CO2は増加しないとされています。カーボンニュートラルについてここで解説すると長くなるので、以下の記事で確認してください。

参考:Fact ism「最近よく聞く『カーボンニュートラル』とは?実際の取り組みってどんなの?

食品産業ではじまっているクリーンエネルギーの取り組み

それでは最後に、国内の食品関連事業者によるクリーンエネルギーへの取り組みについて、いくつかの事例をご紹介しておきます。ここでは、農林水産省が紹介している事例をピックアップしておきます。

株式会社アレフの取り組み

株式会社アレフでは、2018~2020年度の環境行動目標として「自社から出る食品廃棄物を原料に再生可能エネルギー電力を自ら発電する」「再生可能エネルギー由来電力の利用割合目標を設定する」ことを掲げ、再生可能エネルギーを利用した事業運営に取り組んでいます。

株式会社アレフでは、自ら排出する廃棄物を自らリサイクルし、再生可能エネルギーをつくり出すという取り組みを行っています。

 

バイオマス発電の方法は『生物化学的ガス化方式』と呼ばれるタイプで、「小樽ビール醸造所」で発生するビール粕や、店舗の生ごみ処理機でつくられた生ごみ資材などを原料としてメタン発酵させ、バイオガスを取り出しています。そして、このバイオガスと店舗などから回収した廃油でバイオディーゼル燃料を作り自家発電を行っているそうです。この取り組みにより、事務所で使用する電力の68.5%をクリーンエネルギー化することに成功したとされています。

引用:農林水産省公式サイトより

日清食品ホールディングス株式会社

引用:日清食品公式サイトより

現在の仕組みでは、食べ終わった後の油汚れなどがついた即席麺容器は、リサイクルが困難なことから一般的には可燃ごみとして焼却処理されています。
そのため、日清食品は「カップヌードル」の容器に使用しているプラスチックをカーボンニュートラル*1な特性を持つバイオマス資源 (植物由来) を使ったプラスチックに一部置き換える*2ことで、化石燃料由来のプラスチック使用量削減 (=CO2排出量削減) に取組む旨を公表しています。
今回、さらに「ごみ発電電力」を利用し、焼却に伴うエネルギーを活用することで、即席麺容器や、食品残渣を含むごみの再資源化に向け、今年度中に東京本社で使用する電力を「ごみ発電電力」に切り替えることとしました
引用:日清食品公式サイトより

日清食品ホールディングス株式会社では、この「ごみ発電」による電力で、東京本社電力使用量の50%を賄う予定としています。

まとめ

今回は、SDGsの目標の中でも「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」という目標に注目し、食品業界での実際の取り組みなどをご紹介してきました。SDGsでは、再生可能エネルギーの活用を求めているのですが、太陽光発電や風力発電などは、天候や季節などによって発電量が左右されてしまうという、不安定さが課題となっています。

そこで近年、一気に注目され始めたのがバイオマス発電で、あらゆる生命体を資源として活用できるこの技術は、安定的なエネルギーの供給が可能になると期待されています。特に、食品工場などでは、製品の製造過程でどうしても生じてしまう食品残渣がエネルギーになることから、非常に有用な技術とみなされるようになっています。

なお、バイオマス発電は「カーボンニュートラル」という考え方から、CO2を増加させないと言われていますが、原料の収集・輸送時にCO2を排出させてしまうので、完全なカーボンニュートラルとは言えないという指摘もされています。今後、この辺りの課題解決が求められてくるでしょう。

この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。