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投稿日:2023.06.09 
更新日:2023.07.12 

食品業界が取り組むマテリアルリサイクル事例

マテリアルリサイクル

今回は、食品業界で広く取り組まれている『マテリアルリサイクル』について解説します。

廃棄物を製品原料として再利用する取り組みのことを『マテリアルリサイクル』といいます。実際にどのような取り組みが行われているのかご存じない方もおられるかもしれませんが、身近な商品の中にもマテリアルリサイクルで作られた容器が使用されています。

そこで当記事では、マテリアルリサイクルがどういった取り組みなのか、また食品業界で実際に行われている取り組み事例をいくつかご紹介します。

『リサイクル』の種類について

『リサイクル』とは、「使い終わって排出された廃棄物をもう一度資源として再利用する」ことを指しています。このリサイクルは、『リデュース(廃棄物の減量、排出抑制)』、『リユース(再使用)』とともに、廃棄物を減らすための「3R」に位置付けられています。

さらにリサイクルは、その手法ごとに以下の3つに分類されています。

  • サーマルリサイクル
  • ケミカルリサイクル
  • マテリアルリサイクル

ここでは、3つのリサイクルについて、それぞれがどのような取り組みなのかを解説します。

『サーマルリサイクル』とは

『サーマルリサイクル』は、廃棄物を焼却する際に生じる「熱エネルギー」を回収し、利用するというリサイクル方法です。

ゴミの中には、リサイクルするにはまだ技術的に困難であると判断されるものや、分別や仕分けを行うのに多大な労力、時間を要するものが存在します。例えば、通常は古紙としてリサイクルされる紙容器などでも、宅配ピザの空き箱などは、油や食品の臭い、汚れなどが多く付着しているため、再生紙にリサイクルすることが非常に困難です。

したがって、「再利用が難しい」と判断されるゴミは、原料として再利用するのではなく、焼却処理して「熱エネルギー」を回収することでリサイクルしたとみなします。例えば、大阪広域環境施設組合では、以下のようにエネルギーの有効利用を行っています。

“ボイラーで作った蒸気を、工場内の暖房や給湯に利用するとともに、蒸気タービン発電機で発電し、工場の運転に利用しています。また、近隣施設への蒸気供給や電気事業者への電気の売却を行っています。”

引用:大阪広域環境施設組合サイトより

『ケミカルリサイクル』とは

ケミカルリサイクルは、使用済みの資源を科学的に分解して、原料に変えることでリサイクルする手段です。例えば、プラスチックゴミを分解して、石油やガスに戻すという取り組みが代表的なケミカルリサイクルの事例です。

なお、家畜の糞尿を化学反応によって組成変換し、バイオガス化するという取り組みについても、ケミカルリサイクルの一種とみなされています。

『マテリアルリサイクル』とは

マテリアルリサイクルは、回収した廃棄物を原料として、新しい製品を作り出し再利用するというリサイクル方法です。

『マテリアル(material)』は、日本語に訳すと「原料」や「材料」を意味することから、材料リサイクルなどとも呼ばれています。例えば、プラスチックゴミを高温で溶かして原料に戻し、そこからプラスチック製品に再生するといったリサイクルが行われています。

『マテリアルリサイクル』にも種類がある

マテリアルリサイクルは、リサイクルされる際、どのような製品の原料に利用されるのかによって二つの種類に分けられています。ここでは、マテリアルリサイクルの種類についても簡単に解説します。

①レベルマテリアルリサイクル

レベルマテリアルリサイクルは、リサイクル対象を同じ製品の原料として使用するリサイクル方法です。

例えば、廃棄ペットボトルを原料としてペットボトルを作る、廃棄食品トレイを原料として食品トレイを作る、古紙を再生紙にリサイクルするという方法がレベルマテリアルリサイクルに該当します。

②ダウンマテリアルリサイクル

マテリアルリサイクルの中でも、同一製品へリサイクルするには品質を担保できない場合に適用されるものが、ダウンマテリアルリサイクルです。リサイクル対象よりも、一段格下げされた品質分野の製品原料としてリサイクルする方法です。ダウンマテリアルリサイクルは、カスケードリサイクルとも言われます。

例えば、ペットボトルを原料として衣料などにする、デザートカップや洗剤ボトルを原料としてパレットなどを作るリサイクルがダウンマテリアルリサイクルです。

食品業界でのマテリアルリサイクル取り組み事例をご紹介

それでは最後に、食品業界におけるマテリアルリサイクルの実際の取り組みをいくつかご紹介します。ここでは、環境省が令和5年3月に公表した「容器包装のプラスチック資源循環等に資する取組事例集」から、食品関連企業のマテリアルリサイクル事例をピックアップします。

キユーピー株式会社「再生プラスチックの導入」

キユーピー株式会社では、「キユーピー テイスティドレッシング」のプラスチック容器に再生プラスチックの導入を行っています。従来は、化石資源由来プラスチック100%の容器を使用していたそうですが、使用済みペットボトルを原料とした再生プラスチックを容器の素材として使用するようになっています。

これにより、化石資源由来プラスチックの使用量が大幅に削減でき、環境負荷低減につながるとしています。なお、キユーピー株式会社では、今後も再生プラスチックの比率向上、および他ドレッシング容器への展開により、さらなるプラスチック削減を目指すとしています。

参照:容器包装のプラスチック資源循環等に資する取組事例集P.9

日本ハム株式会社 「プラスチック資源をエコバッグに」

プラスチック資源再生スキーム

引用:容器包装のプラスチック資源循環等に資する取組事例集

日本ハム株式会社は、グループ全体の物流で生じる荷崩れ防止用のプラスチックフィルム(ポリエチレン製)をリサイクルし、プラスチック資源の回収から再生品の製作までを国内で完結するスキームを構築しています。
これまでは廃棄していた、物流センター内で使用するプラスチックフィルムから再生材を生成し、それをイベント用のオリジナルエコバックの原料とするマテリアルリサイクルを実現しています。

参照:容器包装のプラスチック資源循環等に資する取組事例集P.13

アサヒ飲料株式会社 「リサイクルペットボトルの導入」

アサヒ飲料株式会社では、ペットボトルのマテリアルリサイクルを推し進めており、以下のように段階的にさまざまな商品がリサイクルペットボトルに切り替えられているようです。

  • 2019年7月から乳性飲料の一部でリサイクルペットボトル採用開始。その後炭酸飲料・アサヒ 十六茶の一部商品へ拡充。
  • 2021年10月より、三ツ矢サイダーPET500ml、2022年2月よりウィルキンソン タンサンPET500mlの一部にメカニカルリサイクルの再生PET樹脂100%にて展開。
  • 2022年5月より当社グループが管理・運営する自販機横のリサイクルボックスで回収した使用済みペットボトルを当社PET商品に再利用する「水平リサイクル」の取り組みを首都圏より開始。

上記のような取り組みにより、石油由来で製造するペットボトルの使用と比較して、CO2排出量抑制に寄与できるとしています。なお、アサヒグループでは、2030年に向けた戦略「3R+Innovation」内にて「2030年までにペットボトルを100%環境配慮素材に切り替える」ことを設定しているそうです。

参照:容器包装のプラスチック資源循環等に資する取組事例集P.20

まとめ

今回は、食品業界で取り組まれているマテリアルリサイクルについて解説しました。この記事でご紹介したように、マテリアルリサイクルは、廃棄物を新たな製品の原料として再利用するリサイクル方法です。

これまで廃棄されていた物から新たな製品を作り出すことができる方法ですので、今後もさまざまな場面で活用されると考えられます。

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この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。