今回は、外食産業において、年々その存在が重要視されるようになっている「セントラルキッチン(CK)」について解説します。
セントラルキッチンとは、複数の飲食店や病院、学校などの常に大量の料理を提供する必要のある施設の調理を一手に引き受ける事で、コスト削減と売上向上を追求する食品工場のことです。
外食産業のみならず、飲食店チェーン、学校、病院、福祉施設、スーパーなどで「セントラルキッチン(CK)」を導入する企業が増えています。
この記事は、「セントラルキッチンとは何か?」という基本から、「食品工場との違い」「建設の際に必要なポイント」「導入コスト・デメリット」まで解説します。セントラルキッチン建設を検討中の方、活用を考えている方にとって、有益な情報をお届けします。
Contents
セントラルキッチンとは?
「セントラルキッチン(CK)」とは、複数店舗や施設(飲食店チェーン・スーパー・学校・病院など)で提供されるメニューを一箇所で調理・加工し、各拠点に配送するシステムです。
セントラルキッチンの仕組み
まずはセントラルキッチンの基礎知識として、その仕組みを簡単に解説します。
冒頭でご紹介したように、セントラルキッチンは、複数の場所で提供される食品の調理を一箇所で引き受ける食品工場のことを指しています。セントラルキッチンは、原材料の仕入れを始めとして、調理から食品の配送までを行います。そして、セントラルキッチンで作られた料理は、それぞれの施設で盛り付けを行い、提供するという形になっています。
このような仕組みは、複数個所で提供する料理の食材について、仕入れを一元化することができ、仕入原価を下げることが期待できます。また、調理場所が一箇所になりますので、調理に必要になる人員が少なくなるほか、食品の味を均一化することができるなど、さまざまなメリットがあります。
セントラルキッチン建設が注目されている理由
セントラルキッチンの仕組みは、1970年代頃からファミリーレストラン業界で導入されてきました。チェーン展開を行う飲食店にとって、一つひとつの店舗に厨房を設けて調理するよりも、専用の工場(セントラルキッチン)で一括調理し、各店舗へ配送する方が多くのメリットを生むからです。
当初は「厨房設備や人員負担を減らし、出店をスムーズに進める仕組み」として導入されましたが、近年では以下の背景から、改めてセントラルキッチン建設が注目されています。
人手不足と技能継承の課題
外食産業では慢性的な人材不足が続き、熟練調理人の技能継承も難しくなっています。セントラルキッチンでの一括調理は、各店舗で高度な技能を持つ人材を確保しなくても運営できる仕組みを提供します。
食品衛生法改正・HACCP義務化などの規制強化
食品衛生法の改正により、すべての食品等事業者にHACCP(衛生管理手法)の導入が義務付けられました。セントラルキッチンは施設設計や管理体制を集中的に整備できるため、規制対応が容易になります。
食材・物流コストの高騰と効率化の必要性
原材料価格や物流費の上昇により、従来の分散調理では非効率が目立ちやすくなっています。セントラルキッチンにより調達・調理・配送を一元化することで、コスト最適化や物流ルートの見直しにつながります。
消費者が求める「均一で高品質な味」
外食においては「どの店舗でも同じ品質の味を楽しみたい」というニーズが高まっています。セントラルキッチンでは調理工程を標準化できるため、ブランドの信頼性や顧客満足度を高めやすくなります。
このように、単なるコスト削減にとどまらず、人材・衛生・物流・品質といった外食産業全体の課題を解決できる仕組みとして、セントラルキッチンの建設が再び注目を集めているのです。
セントラルキッチンを導入するメリット
セントラルキッチンを導入する際にはもちろんセントラルキッチンの建設から行うことになります。
それには多額のコストが必要になりますが、それでも導入する企業が増えていることからも、多くのメリットがあることは理解できます。
ここでは、セントラルキッチンを導入した場合のメリットをまとめます。
売り上げアップを期待できる
セントラルキッチンの導入は、各店舗の売り上げアップに貢献してくれるというメリットがあることから、多額のコストをかけてでも導入する価値があると考える企業が多のです。セントラルキッチンが、売上アップに貢献できる理由は、以下のような点です。
- 提供する食品の均一化
セントラルキッチンを導入した場合、各店舗における食品の品質を均一化できるというメリットがあります。店舗ごとにキッチンを設置して、現場で調理している場合、チェーン店なのにお店によって味が異なるという問題が起きてしまいます。万一、お店の基準に満たない味の食品を提供してしまった場合、そのお店の問題だけにとどまらず、「○○というチェーンは美味しくない」など、グループ全体の評判を下げてしまう結果になりかねません。セントラルキッチンを導入し、どのお店でも一定の品質を保った料理の提供ができるようになれば、「どのお店に行っても同じ品質で楽しめる」という印象を与え、リピート客の増加につながり、売上アップが期待できます。 - 製造キャパシティが増える
各店舗にキッチンを設置し、注文を受けてから調理をするという仕組みだと、製造可能量に限界があります。これが、セントラルキッチンを導入すれば、一度に大量の食品を調理することができるようになりますので、製造可能量のキャパシティを増やすことが可能です。さらに、店舗で料理を提供する際には、一から調理するのではなく、温めて盛り付けるだけで提供できるようになることから、お客様の回転も速くなると期待できます。これらは、どちらも店舗の売上アップを助けてくれます。
コスト削減を期待できる
セントラルキッチンの導入は売り上げアップだけでなく、中長期的な視点で考えた場合、各店舗にキッチンを分散するよりもコスト削減が可能です。
- 人件費の削減
セントラルキッチンでまとめて調理をする場合、各店舗では複雑な調理作業がなくなるわけですので、調理専門のスタッフなどを雇う必要がなくなります。つまり、調理技能を有する人材にかかる人件費を大幅に削減することができます。 - 新規店舗の出店コストが下がる
新たな店舗を出店する時には、複雑な調理設備などを導入する必要がありません。セントラルキッチンで調理した料理を、温め直して盛り付けするといった仕組みになりますので、新規店舗の出店にかかるコストを削減できるようになります。 - 仕入れコストの削減
セントラルキッチンを導入した場合、複数店舗の調理をまとめて行うことになるため、一度に大量の食材を仕入れることになります。したがって、大量発注による仕入原価の削減が可能になります。 - 衛生管理コストが下がる
セントラルキッチンの導入は、衛生管理がし易くなるという点も大きなメリットです。と言うのも、各店舗にキッチンを用意した場合、衛生管理をしなければならない場所や人が多くなりますので、何らかの問題が生じてしまうリスクはどうしても高くなります。調理を一箇所に集中すれば、それだけコストも下げて衛生管理を徹底することができます。
セントラルキッチンの導入には、上記のようなさまざまなメリットが考えられます。
さらに近年外食産業でセントラルキッチンが注目されているのは、お店独自の調理方法やレシピなど、企業の財産と言える情報の漏洩のリスクを低減できるというメリットもあるからです。情報漏洩のリスクに関しては、機密情報に触れる人員が多ければ多いほど高くなります。
したがって、秘密にしておきたい調理工程やレシピに関して、セントラルキッチン内でしか取り扱わないことにすれば、その情報に触れることができる人が少なくなるので、情報が出回るリスクを少なくすることができるわけです。
このように、さまざまなメリットが存在することから、外食産業だけでなく、学校や福祉施設など、あらゆる業界でセントラルキッチンの導入が進んでいます。
セントラルキッチンのデメリット
セントラルキッチンの導入を検討する際には、メリットだけでなくデメリットも正しく理解しておくことが大切です。ここでは代表的な注意点をご紹介します。
初期投資の大きさ
セントラルキッチンを建設するには、土地取得・建物建設・設備導入などに多額の資本が必要です。投資回収までには時間を要するため、長期的な事業計画と資金計画が欠かせません。
運営リスクの集中
食品事故や設備トラブルなどが発生した場合、その影響は複数店舗に一気に広がります。事前の品質管理体制や保険、設備の保全対策を講じることが重要です。
配送ロジスティクスコスト
調理済みの食品を各店舗へ届けるには、配送距離や温度管理などの条件を満たす必要があります。そのため輸送費用が想定以上にかかるケースがあり、物流設計を慎重に検討する必要があります。
食品ロス管理の難しさ
セントラルキッチンでは一括大量調理を行うため、需要予測が外れた場合に食品ロスが発生しやすくなります。特に調理済み食品が余ると、食材費だけでなく人件費や光熱費なども無駄になってしまいます。需要予測の精度向上や在庫管理の仕組みづくりが収益性を大きく左右します。
このように、セントラルキッチンには大きな利点がある一方で、初期投資やリスク管理、物流や在庫管理といった運営上の課題も伴います。導入を検討する際には、メリットとデメリットの両面を比較検討し、十分な準備を行うことが成功の鍵となります。
セントラルキッチン建設で注意したいこと
セントラルキッチンを建設する際には、食品衛生法改正(2021年6月1日施行)やHACCP義務化といった規制強化を踏まえ、食品事故を未然に防ぐ設計と運用が求められます。特にセントラルキッチンは、一度事故が発生すると多店舗に影響が及ぶため、立地・設計・設備選定を慎重に進めることが重要です。以下に具体的な流れとポイントを整理します。
建設プロセスの流れ
セントラルキッチンの建設には、いくつかの主要な工程があります。
- 立地選定:物流効率や交通アクセス、周辺環境、近隣規制を考慮します。
- 設計フェーズ:動線設計、ゾーニング、温度管理設計、HACCP対応、衛生ゾーンの確立が不可欠です。
- 設備仕様選定:調理設備、冷凍冷蔵庫、包装機など、業態に適した機器を導入します。
- 建築施工・認証取得:施工後は食品衛生関連の認証取得を行い、運用開始につなげます。
立地・施設設計のポイント
効率的で安全な運営のためには、以下の視点が欠かせません。
- 営業施設までの配送時間を考慮した場所選び
- 原材料搬入 → 前処理 → 調理 → 盛付 → 出荷 → 洗浄 という一連の動線を整理
- クリーンルームの導入、冷蔵・冷凍ゾーン、生・加熱ゾーンの明確な分離など、衛生・温度管理の徹底
費用の目安(実例・概算)
建設費用は規模や業態によって大きく変動します。
- 小規模CK(チェーン10店舗程度対応):建設費用+設備費で数千万円~数億円規模
- 中規模CK(スーパーマーケットや病院、大手チェーン対応):数億円規模になるケースも多い
- 維持費・運営コスト:光熱費、物流費、保守・運営費などを含めた「ライフサイクルコスト」での試算が不可欠です。
このように、セントラルキッチン建設は単なる施設建設ではなく、法規制対応・物流効率・衛生管理・費用対効果まで含めた総合的な計画が求められます。実績のある食品関連施設の建設会社へ依頼することで、リスクを抑え、安心して運用をスタートできるでしょう。
セントラルキッチン建設で注意したいこと
セントラルキッチンに限ったことではないのですが、2021年3年6月1日に食品衛生法が改正され、食品工場では食を取り扱う環境の変化への対応が求められています。
改定の内容は、過去の食中毒の発生状況等を踏まえ、規格基準の有無や許可業種の再編がされています。
デメリットでもご紹介したように、セントラルキッチンは食中毒や異物混入などの食品事故が発生した場合被害が大きくなります。
食品事故が発生しないように、必要な基準をしっかり守って、セントラルキッチンに適した導線設計や設備を整える必要があります。
セントラルキッチンの建設については食品関連施設の建設実績が豊富な会社に依頼すると安心です。
セントラルキッチン建設事例
まとめ
今回は、セントラルキッチンの基礎知識から、導入メリット・デメリット、さらに建設時の注意点までご紹介しました。セントラルキッチンは、複数店舗を展開する飲食チェーンやスーパー、病院などにとって、人手不足や技能継承の課題、食品衛生法改正やHACCP義務化といった規制強化、食材・物流コストの高騰など、現代の外食産業が抱えるさまざまな課題に対応できる仕組みです。
導入によって、コスト削減や出店スピードの向上、味や品質の均一化といったメリットが期待できる一方で、初期投資の大きさや運営リスクの集中、物流コストや食品ロス管理といったデメリットも伴います。そのため、セントラルキッチンの建設には、立地・動線・衛生ゾーニング・設備仕様などを含めた総合的な設計と計画が欠かせません。
特に、人が口にする食品を大量に取り扱う施設である以上、食品事故を防ぐための徹底した衛生管理と、各種認証の取得が求められます。こうした課題をクリアするには、食品関連施設の建設実績が豊富なパートナーに依頼することが安心につながります。
三和建設では、検討段階でのご相談から、設計・施工まで一貫して対応しております。セントラルキッチンの建設をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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