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投稿日:2025.07.28 

食品工場建設時の温度設定の考え方

食品工場建設時の温度設定

 

一般住宅に設置される家庭用エアコンは、部屋の畳数に応じて設置すべきエアコンの種類を簡単に選ぶことができます。しかし、食品工場などの製造現場は、厳密な温度管理が求められるエリアが存在するため、設置する空調設備の種類を慎重に選ぶ必要があります。

本記事では、食品工場を建設する時の温度設定の考え方や、エアコンの種類、温度設定時の注意点について解説します。工場内で適切な温度帯を維持するための参考になれば幸いです。

 

食品工場に設置されるエアコンの種類と温度設定のポイント

食品工場などの大規模施設では、家庭用エアコンでは対応できないため、専用の業務用空調機器が求められます。広い空間の温度を一定に保ち、製品の品質や作業環境の快適性を維持するためには、用途に適した機器の選定が欠かせません。

また、食品工場では取り扱う製品の特性や、厳しい衛生管理基準に対応した空調環境が求められます。ここでは、食品工場に導入される主なエアコンの種類と、それぞれの特徴について解説します。

 

エアコンの種類と特徴

食品工場で使用されるエアコンには、「一般エアコン」「中温エアコン」「低温エアコン(冷凍機)」の3種類があり、それぞれに異なる温度帯や機能性が求められます。防塵・耐熱・換気連携など、求められる機能性に加えて室内の設定温度に合わせて空調機のスペックを選ぶ必要があります。

 

一般エアコン(設定温度目安:17〜28℃)

  • 作業エリアや事務所など、特別な温度管理が不要なエリアで使用。
  • 油煙や湿気にも耐えられる防塵・耐久性に優れた設計。
  • 室温は事務所衛生基準規則を参考に、17〜28℃で管理されることが多い。

事務所衛生基準規則などでは、室温は概ね17℃以上28℃以下に保つことが推奨されています。一般エアコンは、この温度帯を安定して維持できる空調機であり、工場の作業エリアに広く採用されています。

工場用エアコンは、家庭用とは異なり、油煙や湿気の多い環境でも安定稼働できるよう、耐久性や防塵性が強化されている点が特徴です。

 

中温エアコン(設定温度目安:10〜25℃)

  • 食品加工室、ワイン・医薬品保管庫など、温度変化が品質に影響する場所に使用。
  • 高外気温(例:40℃超)でも安定した温度維持が可能。
  • 一般エアコンよりも精密な制御が可能だが、機器コストはやや高め。

中温エアコンは、極端な低温ではなく、一定の中間温度帯を安定的に保つことに特化した空調機です。夏場の外気温が40℃を超えるような状況でも、室温を一定に保つ性能があり、食品加工、ワインの貯蔵、医薬品の保管など、温度変化が品質に直結する環境で多く採用されています。

 

低温エアコン(設定温度目安:−30〜+20℃)

  • 冷凍食品倉庫、生鮮品の加工ライン、原料保管庫などで使用。
  • −30℃といった超低温にも対応可能な高性能機器。
  • 冷却能力に優れ、厳しい温度管理が求められる環境で活躍。

より厳格な温度管理が必要な場所には、冷蔵・冷凍用途に対応した低温エアコンが導入されます。−30℃にも対応できる機種もあり、生鮮食品を扱う加工ラインや冷凍食品倉庫、穀物保管庫などで活躍しています。

 

食品工場建設時の温度設定について

それでは次に、食品工場を建設する際の温度設定に関する注意点について解説します。食品工場では、取り扱い製品の特性に合わせた温度設定が求められますが、温度帯を安易に決めてしまうと、空調設備にかかるコストが過剰になる恐れがあります。

ここでは、工場内の温度設定を決める際に確認すべきポイントをご紹介します。

 

温度設定における注意点

各室条件においては、温度設定を25℃に設定している場合が多くあります。同じ25℃という温度設定の施設でも「多少、設定温度を超えても影響は出ない」というケースと「商品の管理上、絶対に25℃以下が求められる」というケースでは、求められる空調機のスペックなどが変わります。また、温度設定に係わる基準によって、外気の取り入れ方なども変わります。厳格な温度管理が求められるエリアでは、外気を一度処理して導入する「外気処理機」を取り入れる必要があるなど、空調周りの導入コストが高くなります。

空調機の選定には、単に設定温度を決めるだけでなく、その温度が「絶対に守らなければならないかどうか」を明確にすることが重要です。
 
温度の厳格性を明確にする
「おおよそ25℃程度で良いで問題ない」のか、「必ず常に25℃以下を維持しなければならない」のかによって、必要な求められる空調機の性能は大きく異なります変わります。
 

  • 少し温度が上下しても問題ない → 一般エアコンで対応可能
  • 温度変化が製品劣化につながる → 中温・低温エアコンが必要

特に厳格な温度管理が必要な場合は、一般エアコンでは対応できないことが多く、中温または低温エアコンの導入が求められます。

 
上限だけでなく下限温度にも注意

設定温度は夏季だけでなく、冬季の影響も考慮する必要があります。例えば、夏の冷却を優先して温度を下げすぎると、冬場には製品の品質や作業環境に悪影響が出る可能性があります。そのため、年間を通じて安定した温度帯を維持できるよう、冷暖房両対応の機器選定が望ましいケースもあります。

 
設定温度に応じた運用を守る

工場内の内装や構造は、あらかじめ設定された温度に合わせて設計されています。そのため、運用開始後に温度を大きく変更すると、結露やカビの発生、建材の劣化といったトラブルにつながるリスクがありますを引き起こす恐れがあります。運用中は、初期の設定温度に従った温度管理を徹底しましょうすることが重要です。
 
関連記事:成行(なりゆき)温度設定の難しさについて食品工場建設の専門家が解説

 

その他の注意点

食品工場建設時の空調機選定では、上で紹介した温度設定以外にも、以下のような点に注意しましょう。

  • 外気導入の注意点
    食品工場では、外気を取り込む際に異物混入や結露発生のリスクを避けるため、外気処理機の導入やフィルターによる除塵処理が必要です。外気の温湿度差が大きい場合は、空調設備に過度な負荷がかかることもあるため、事前の環境設計が重要です。
  • 故障時のリスクを考慮する
    厳格な温度管理が求められる施設の場合、空調機の故障リスクのことを考慮する必要があります。例えば、1台の空調機しか設置していない場合は、故障時に修理や交換に時間がかかる可能性もあるため、万一のことを考慮して、複数台の設置が必要かどうかを検討しておきましょう。
  • 補助金の利用について
    空調機の新設・更新には、国や自治体の補助金(省エネ設備導入補助金等)が利用できる場合があります。対象となる条件や手続きは年度や地域によって異なるため、計画初期の段階で調査しておきましょう。

 

まとめ

今回は、食品工場を建設する際の温度設定の注意点や、温度管理に使用する空調機の種類について解説しました。

食品工場の空調計画では、「何度に設定するか」だけでなく、「なぜその温度が必要なのか」を明確にすることが重要です。例えば、「25℃程度でよい」という場合と、「必ず25℃以下を維持する必要がある」場合では、必要な空調機の性能が大きく異なり、導入コストやランニングコストにも影響します。

設定温度に迷った際は、食品工場の実績が豊富な専門会社に相談し、空調機の選定も含めたアドバイスを受けるとよいでしょう。

適切な温度設定は、食品工場建設における重要なステップです。食品工場の新設や改修をご検討の方は、食品工場の設計・施工の実績豊富な【FACTAS】にご相談ください。

この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。