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建築

投稿日:2020.06.26 
更新日:2022.09.26 

工場・倉庫の耐震性を向上させるためには?

 

諸外国と比較しても非常に地震の発生数が多いと言われる日本ですが、実は世界中で発生しているマグニチュード6以上の地震について、その2割以上が日本で発生していると言われています。さらに近年では、南海トラフ地震や首都直下地震など、マグニチュード8~9クラスの超巨大地震が発生する可能性が高まっていると言われており、多くの従業員が一か所に集まって働くこととなる工場などの大規模施設では、高い耐震性能が求められています。 しかし、全国に点在する工場や倉庫を考えてみると、旧耐震基準の1981年以前に建てられた建物も多く存在しており、そういった建物では一定の耐震性が確保できていないケースも多いのです。こういった施設は、大きな地震が発生した際に建物自体に大きな被害が出てしまう可能性が高くなり、施設内で働く従業員の命を危険にさらしてしまうことにも繋がります。 それでは、工場や倉庫において、一定の耐震性を確保しようと思えばどのような対策を行えば良いのでしょうか?この記事では、工場や倉庫における耐震性確保の流れを簡単にご紹介しておきます。

 

耐震性確保の流れ

それではまず、工場や倉庫における耐震性確保の流れを簡単に紹介します。
工場や倉庫など、建物所有者であれば、人命保護に努めることは当然として、他にも事業に必要な資産を守るという観点が必要です。生産を行うための建物を守るということは、施設内の高価な機械・設備や顧客の大切な製品を守ることにもつながります。「いつ・どこで」発生するか分からないのが地震ですので、常に万全な状態で地震に備えるられるよう、建物の耐震性は確保しておかなければならないでしょう。 参考として、三和建設が行っている、既存の工場や倉庫に対する耐震性確保の流れを簡単にご紹介します。

 

  1. 事前相談 既存資料(設計図書)と簡易目視調査をもとに既存施設の耐震性に関するコメントを作成し、耐震診断費用をご提示します。
  2. 現地調査 専門の技術者が、柱・梁などの部材や構造ディテールの調査を行います。
  3. 耐震診断 耐震診断基準に基づき指標を算出します。
  4. 耐震補強設計 建物使用状況も踏まえて、さまざまな補強技術の中から最適な補強方法をご提案します。
  5. 耐震補強工事 生産への影響を綿密に考慮した施工計画に基づき、所定の耐震性能を確保するための工事を行います。

古くなった工場や倉庫での地震対策は?

それでは、古くなった工場や倉庫など、一定の耐震性が確保できていない施設に施される地震対策にはどのようなものがあるのかも簡単にご紹介しておきましょう。

 

壁を増やして建物を補強する(鉄筋コンクリート造の場合)

まずは、建物の耐震性を確保するための手段として、比較的簡単で効果的と言われる手法からです。
この手法は非常に単純で、耐震性に優れたコンクリート壁を施設内にバランスよく配置していくという方法です。壁を増やすだけで、建物の耐震性を大きく向上させることができるのです。ただし注意が必要なのは、工場や倉庫において「壁を増やす」という手法で耐震性の確保を行った場合、施設の使い勝手が悪くなってしまう可能性があるということです。
なお、何らかの問題で建物内に壁を増やすことができないような施設の場合、外部に控壁(バットレス)を増設することで耐震性を向上させることが可能です。敷地にある程度余裕がある、製造フローの関係で施設内に壁を増設するのは難しい…などと言った場合に用いられます。

 

既存の柱を補強する(鉄筋コンクリート造の場合)

既存の柱に鋼板を巻くなどして補強する手法も、非常に有効な耐震性確保の手段となります。既存施設の柱や梁を補強するという手段は、建物の強度や粘りを向上させることにつながりますので、地震によって建物が倒壊してしまうリスクを低減させることが可能です。

 

ブレースを増やす(鉄骨造の場合)

既存施設においては、耐震性向上のために鉄骨ブレースを追加するという手法が多く取られます。ブレースは、いわゆる『筋交』のことで、柱と梁に囲まれた面に斜めに材を渡すことで、水平荷重に対してより耐性の高い構造とすることが可能になります。

 

免震構造にする

既存の建物を免震化することを「免震レトロフィット」といいます。
この手法は、重要文化財に指定されている歴史的な建造物など、免震技術が無い時代に建てられたものを保存するために採用されている手法です。既存施設を免震構造にするためには、周囲を掘り下げて基礎に手を加えることや、躯体をジャッキアップして免震装置を設置するなど、かなり大規模な改修工事となるため、多大なコストがかかるのを覚悟しなければなりません。ただし、耐震対策とは異なり、建物内部に地震の影響を伝わりにくくすることで、より安全性の高い施設を実現することができます。

参考:RiSOKOお役立ち情報より

 

まとめ

今回は、工場や倉庫の耐震性について簡単にご紹介してきました。本稿でご紹介したように、日本は地震が非常に多い国として有名です。特に注意が必要なのは、さまざまな技術が発展した現在でも地震の発生を正確に予測することは難しく、いつ・どこで大規模地震が発生するのか誰にも分からないということです。
そのため、多くの従業員が共に働き、高価な設備や顧客の商品が大量に保管されている工場や倉庫といった施設では、常に地震が発生しても良いようさまざまな対策を進めておく必要があるのです。特に、旧耐震基準の1981年以前に建てられた建物であれば、一定の耐震性を確保できていない可能性が高いので、一度耐震診断をしておくのがオススメです。

 

食品工場建設・設計・倉庫のコンサルタントやプロデュースは三和建設にご相談ください。

この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。