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投稿日:2023.02.07 
更新日:2023.05.23 

食品業界で続く設備投資の状況について

世界情勢が複雑化する中、日本国内では建設物価上昇が続いていることもあり、設備投資には消極的な姿勢を見せる企業様が多いように思えます。ただ、全ての業界が設備投資に消極的な訳ではなく、食品製造に関わる大手食品メーカーについては、工場の新設に動く企業があるなど、大型設備投資が活発な状況になっています。
そこで当記事では、食品業界での設備投資に関する実情について紹介します。
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食品業界で設備投資が続く背景とは?

ここでは、日本政策金融公庫(略称:日本公庫)農林水産事業が行った、「食品産業動向調査(令和4年1月調査)」のデータを中心に、食品業界における設備投資の状況と、各企業の意識などをご紹介します。
まず、設備投資の状況についてですが、新型コロナウイルスによるパンデミックは、食品業界に非常に大きな衝撃を与え、一時的に設備投資への意識は低下していました。しかし、令和4年1月の調査では、「設備投資DIはコロナ禍前の水準に回復」という結果が出ています。
食品産業動向調査
引用:食品産業動向調査(令和4年1月調査)

 
それでは、食品業界の設備投資の背景には、どのような目的があるのかもこの調査結果から見ていきましょう。
 

設備投資の背景には労働力不足がある

日本の総人口は、長期的かつ急激な減少過程にあると言われています。内閣府が公表しているデータによると、2010年に1億2,800万人だった総人口は、2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれています。
わずか50年余りの間に総人口の3割以上が減少するという状況です。現在もあらゆる業界で労働力不足は大きな課題と捉えられています。特に、食品製造業では、慢性的な人手不足に悩まされる状況にあり、その打開策として、業務効率化や省人化を実現できる設備投資が活発に行われるようになっています。
実際に、食品産業動向調査(令和4年1月調査)のデータを以下でご紹介します。

 

■労働力不足の原因

労働力不足の原因
引用:食品産業動向調査(令和4年1月調査)
 

食品産業では、求人を出しても「応募が無い」という状況が労働力不足の主な原因に続き、非正規労働者の割合が高いことや、早期の離職者が多いことも慢性的な労働力不足の要因になっていると考えられます。

 

■労働力不足の職種

労働力不足の職種
引用:食品産業動向調査(令和4年1月調査)
 

上のグラフは、「労働力が不足している職種」についてのデータです。これからも分かるように、食品製造業では、事業の根幹をなす「商品生産(単純作業)」(79.0%)、「商品生産(熟練作業)」(44.7%)について、多くの企業が労働力の不足を感じているようです。
 

■労働力不足の解決策

労働力不足の解決策
引用:食品産業動向調査(令和4年1月調査)
 

労働力不足の解決策については、すべての業種で「労働条件の改善」が6割を超えています。ただ、食品製造業界に関しては、「作業工程の機械化」が顕著に突出しており、4割を超えています。設備投資による労働力不足の解決を目指す企業が他の食品関連の業種よりも多いことが分かります。。

 

食品業界の人手不足を解決する技術とは?

それでは最後に、今後ますます深刻化すると予想されている労働力不足について、食品業界ではどのような方法でこの問題を解決しようと考えられているのか、いくつかの具体例をご紹介します。近年の製造業界では、『スマートファクトリー』という用語を耳にする機会が多くなっていると思います。そして食品製造業界でも、食品工場のスマート化が注目されていて、今後の人手不足を解決するため、急速に工場のスマート化に対する設備投資が進んでいます。
以下で、食品工場のスマート化に役立つ代表的な施策をご紹介します。

 

ロボットの活用

製造業界での「ロボットの導入」はもはやおなじみの人手不足解決法となっています。ただ、食品製造業界では、他の製造業とは異なり、長年ロボットの導入には消極的な企業が多かったように思えます。これは、食品製造業は、取り扱う製品が多品目であったり、形状や性質が均一でないことから、安全性や衛生面をクリアするハードルが非常に高いと考えられたことが要因です。そのため、食品の製造工程では、人の目視による確認や手作業に依存する傾向が強く、熟練の技術者が離職した際には、一気に生産性が低下するなどの問題も発生していました。
しかし、近年ではAI技術や画像認識技術の飛躍的な進化もあり、食品製造業向け産業用ロボットの開発が急速に進んでいます。食品の製造現場へのロボットの導入は、生産性の向上や省人化だけでなく、過酷な環境下での作業をロボットに任せることができるようになるなど、従業員の労働環境改善を実現し、離職率の改善も期待できます。
 
関連記事:食品製造業界における人手不足の現状。ロボットの活用で何が解決できる?
 

AIの活用

食品業界では、AIの導入も積極的に行われるようになっています。
例えば、食品製造業界では、生産ラインにおいて、包装や容器に破損や印字ミスが無いか、異物の混入や不良品はないかなど、外観検査工程があります。従来の食品工場では、こういった検品作業のために人を配置し、目視による検品が行われていました。これが、画像認識やAI技術の向上により、機械に任せられるようになってきています。AI技術を検品作業に導入した場合、熟練の作業者よりも正確で高速な検品作業が実現するなど、人手不足解消だけでなく生産性の向上も期待されています。
なお、最近ではAIに需要予測を行わせることで、フードロスの削減を目指すといった取り組みを行う食品メーカーが登場するなど、さまざまな面でAI技術に対する設備投資が活発になっています。
 

IoTの活用

食品工場のスマート化の中でも、比較的低コストで導入できると言われているのが『IoT』技術です。IoTは、「Internet of Things」の略語で、簡単にいえば、工場内のモノをインターネットに接続する技術を指しています。
IoTを導入することで、食品工場内での人の動きが正確につかめるようになり「無駄の削減」を実現した事例や、正確な温度管理が実現したといった事例があります。日本国内の食品関連施設は、HACCPによる衛生管理が義務化されていますが、IoTは食品工場内の温度管理、湿度管理のために導入する企業が増えています。
関連記事:食品工場のIOT・ロボット導入事例を紹介

 

まとめ

今回は、食品業界での設備投資事情や、食品業界で今、設備投資を検討する企業が多い理由について解説しました。
食品業界では、新型コロナウイルス問題により、一時的に設備投資が止まったものの、令和4年には一気にコロナ以前に近い状態まで戻っているという調査データが出ています。こういった食品業界での設備投資は、やはり年々深刻化する労働力不足が背景にあると考えられています。
そして、食品製造を担う企業が、その他の食品関連事業者の倍以上の割合で労働力不足の解決策として『作業工程の機械化』をあげています。
なお、食品工場へのロボットやAI技術など、最新テクノロジーの導入を行う場合、施設そのもののレイアウト設計の見直しが非常に重要です。現状のレイアウトで新規設備の導入を行い、逆に工場内の導線が悪くなり、従来よりも生産性が低下する事態も考えられます。
そうならないためにも、食品工場建設のプロであるFACTAS®に是非ご相談ください。

この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。