食品
投稿日:2026.01.06
今回は、食品工場における有害生物リスクに対処するための方法として、弊社も推奨している「有害生物リスクナビ」について、その概要と具体的な診断内容を解説します。
食品工場で、害虫や害獣が発生すると、製品への異物混入リスクが非常に高くなります。そのため、工場建設時には、侵入防止(物理的バリア)、環境管理(清掃・整理整頓・温湿度管理)、発生源対策など、さまざまな有害生物対策が施されることが一般的です。
しかし、竣工時に完璧な対策が実施されていたとしても、経年劣化、ライン変更、増改築などによって環境が変わり、有害生物リスクが増大する可能性があります。また、工場の立地条件によって必要な対策は異なるため、施設ごとに実施すべき対策を明確にしなければなりません。
有害生物リスクナビは、各施設に存在する問題点を洗い出し、それに対する効果的な改善策を提案する健康診断のようなサービスです。診断結果に基づき、適切な対策を取り入れることで、有害生物リスクを大幅に軽減できるとされています。本記事では、有害生物リスクナビによって何が分かるのかを解説します。
Contents
それではまず、有害生物リスクナビが何を目的としたサービスなのかを簡単にご紹介します。
食品工場にとっての有害生物は、ゴキブリ、ネズミ、ハエ、チョウバエ、ノシメマダラメイガなどのメイガ類、コクゾウムシなどの貯穀害虫、アリ、チャタテムシなど、さまざまな生物があげられます。これらの有害生物は、異物混入や食中毒菌の媒介、製品の汚染・破壊、火災リスクなど、さまざまな問題を引き起こし、最悪の場合はブランドイメージの低下や企業の信用失墜など、致命的な問題に発展します。
有害生物リスクナビは、上で紹介した生物によって発生する問題を未然に防ぐためのサービスで、公式サイト内では以下のように解説されています。
有害生物リスクナビは、安心・安全な製造環境を構築するため、有害生物による危害を予防するための総合調査となります。さまざまな角度から施設に潜むリスクが分析できるようになるため、「有害生物対策の中期計画をたてたい」「異物混入対策について、やり残していることはないか確認したい」などの声に答えることができます。
それでは、有害生物リスクナビについて、どのような調査が行われるのかを解説します。ここでは、イカリ消毒株式会社様のパンフレットをもとに、上で紹介した7つの調査項目について、詳細な調査内容をご紹介します。
施設の周辺環境について、半径1km範囲の環境状況や風向きの分析を行い、飛翔性昆虫類の施設への飛来リスクを数値化します。
例えば、以下のような環境条件に関する調査・分析が実施されます。
上記のほか、水処理施設やゴミ処理場、畜舎など、昆虫類の発生が考えられる施設の有無や位置を考慮した調査が実施されます。なお、基本的には、机上調査が行われ、目視による問題の抽出はオプションとされています。
工場の敷地内には、昆虫類の発生源となり得る場所が多く存在します。そのため、敷地内の昆虫類の発生源や環境要因、管理運用の状況などを調査し、発生や定着リスクの分析が行われます。
例えば、以下のような場所の調査が実施されます。

建屋構造の調査は、外壁や屋上(屋根)、床下などからの、害虫、害獣の侵入経路の調査を行うことで、侵入・定着リスクの分析がなされます。

施設内に侵入する害虫・害獣は、思いもよらぬ場所を侵入口としているケースがあります。昆虫などは、非常に小さな生き物なので、建物接合部、鋼材貫通部の隙間などを使って侵入することも可能です。この他、シャッターなどの管理不足が原因でネズミなどが侵入することもあるでしょう。この調査では、建屋構造が原因となる侵入リスクの調査・分析が行われます。
施設内部についても、侵入箇所や発生源になる場所を調査します。例えば、屋内の内壁や排水溝、天井裏などの問題を調査し、有害生物の発生リスクや移動リスク、定着リスクなどを分析します。

製造工程や、生産活動に使用する製造機器などについて、有機物の発生や残差の蓄積、環境要因などを調査することで、有害生物の定着、混入リスクの分析を行います。

製造工程によって、潜んでいるリスクが異なります。この調査では、異物混入の防止を主目的とし、製造機器や製造環境で発生する有害生物のリスクを調査します。
有害生物の生態に応じたトラップの設置状況、管理状況、害種、慢性的な問題点などの調査を行います。

モニタリング設置ポイントや使用資材などの不備を確認することは、その後のモニタリングの改善に有効です。
この調査では、照明や捕虫器などの光源が、飛翔性昆虫類の誘引に影響を与える箇所があるかを、虫の目カメラなどの専用機器を用いて調査します。
虫の目カメラは、紫外線が出ている照明が明るく映り、出ていない照明は暗く映ります。紫外線は人の目では見ることができないため、これを利用することで昆虫類の誘引リスクを判断できるようになります。
これにより、捕虫器の光が、製造ラインに近い、反射しているなどの誘引混入リスクになる場所を調査、分析できます。
有害生物リスクナビは、上記の7項目の調査がメインとなります。ただし、必要に応じて、さらに詳しい調査のためのオプションメニューなども用意されています。
画像参照など:有害生物リスクナビパンフレットより
今回は、食品工場における有害生物のリスク診断として、非常に有用なサービスである「有害生物リスクナビ」の調査内容について解説しました。
食品工場は、食べ物を取り扱うという特性上、それを餌とする有害生物を誘引しやすいという課題が避けられません。害虫や害獣の発生、施設内への侵入を防止できなかった場合、異物混入や食中毒事故に発展するリスクがあるため、食品工場建設時には、さまざまな対策が施されています。
しかし、有害生物由来のリスクは施設ごとに異なり、一般的に有効とされているような対策でも、効果をなさないケースが考えられます。有害生物リスクナビは、施設ごとにどのような有害生物のリスクがあり、必要な対策が何なのか診断してくれるサービスで、まさに施設の健康診断と言えるでしょう。
三和建設では、食品工場建設の提案段階でリスクナビを実施し、その診断結果に応じて、必要な有害生物への対策をご提案することが多いです。診断そのものは、弊社負担で実施し、診断結果に応じて必要な対策を実装する場合、施工内容に応じてお見積もりを提出しているため、安心して安全な施設計画を進めていただけると確信しています。
この記事を書いた人

安藤 知広
FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長
1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。