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法令/行政

投稿日:2021.09.28 
更新日:2022.09.26 

プラスチック資源循環促進法が成立!この法律によって、今後何がどう変わるの?

私たちの日常生活に非常に身近な素材であるプラスチックですが、海洋プラスチックごみ問題や気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応を契機に、日本国内での「プラスチック資源循環」を促進するための取り組みが一層重要と言われるようになっています。そこで日本では、2022年4月から「プラスチック資源循環促進法」が施行される予定となっています。この法律は、プラスチックごみの削減とリサイクルを促進することが目的とされているのですが、具体的にどのような部分が変わっていくのか分からないという方は非常に多いと思います。

そもそもプラスチックは、形成しやすく、軽くて丈夫、さらに密閉性も高いなど、製品の軽量化や食品ロスの削減など、あらゆる分野で私たちの生活に貢献している素材です。しかしその一方でほとんどすべてのプラスチックが分解されないという特徴を持っており、海洋プラスチックごみの増加による生態系への悪影響などを考慮し、プラスチックごみの削減やリサイクル強化が世界中で緊急課題となっています。

EU(欧州連合)では2022年から「皿やコップなどへの使い捨てプラスチックの使用が完全に禁止となる」など、非常に強い措置がとられることになっているのですが、日本ではプラスチックの取り扱いがどのように変わっていくのでしょうか?特に、農林水産・食品産業においては、多くのプラスチック製品を利活用していますし、積極的な「プラスチック資源循環」への取り組みが求められることでしょう。
そこでこの記事では、 プラスチック資源循環促進法によって、今後のプラスチックの取り扱いがどう変わるのかについて予想していきたいと思います。

プラスチック資源循環促進法が必要とされる理由は?

普段私たちが何気なく進めている日常生活ですが、そのライフスタイルにおいては大量のプラスチックゴミが排出されています。そしてこれらのプラスチックゴミが海に出て、海洋汚染を中心とした環境問題や海洋生物そして人間の健康にまでも悪影響を及ぼしています。さらに、プラスチックゴミは気候変動にも関連があると言われるようになっており、世界中で解決しなければならない喫緊の課題とされるようになっています。

こういった状況から、日本では2021年6月に『プラスチック資源循環促進法』が成立し、2022年4月頃に施行される予定となっています。なお、この法律が作られる背景については以下のように説明されています。

・海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応を契機として、国内におけるプラスチックの資源循環を一層促進する重要性が高まっている。
・このため、多様な物品に使用されているプラスチックに関し、包括的に資源循環体制を強化する必要がある
引用:経済産業省資料より

2022年施行予定となっているプラスチック資源循環促進法は、『製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取組(3R+Renewable)を促進するための措置を講じます。』とされています。これはプラスチックの「リデュース=削減」「リユース=再利用」「リサイクル=再資源化」の3Rに加えて、「リニューアブル=再生可能」を掲げたものとなっています。
ちなみに、「プラスチック資源循環戦略」というものが2019年に策定されているのですが、この際には、2030年までに「使い捨てプラスチックの排出を25%減らして再生利用を倍増する」という目標が掲げられていました。この目標を達成するため、コンビニなどでのレジ袋が有料化されたのは皆さんの記憶にも新しいのではないでしょうか。

参考資料:プラスチック資源循環戦略(概要)

プラスチック資源循環促進法で何が変わる?

それでは、この法律でプラスチック利用に関して何が変わっていくのかについて簡単に解説していきましょう。上述したように、EUでは2022年から「皿やコップなどへの使い捨てプラスチックの使用が完全に禁止となる」など、どちらかというと海洋プラスチックごみ問題の解消には「早急にリデュース(削減)が必要」と言った方針となっています。実際に、EU各国では、既にプラスチック容器から紙容器への切り替えが始まってきており、イタリアなどでは持ち帰り用のコーヒーなどは、紙コップにて提供されるようになっています。また、スーパーなどでも、使い捨てプラスチック製品が紙などの製品に置き換わっています。
これに対し日本国内での対応は、「リサイクル(再資源化)」が最優先と考えられており「リデュース(削減)」の優先順位が低いのではないかという疑問の声も上がっています。

今回の法律で行われる具体的な対策は以下です。

環境配慮設計指針が策定される

環境に配慮した商品設計の指針を新たに国が作ります。そして、指針に適合した製品が国が認定し、認定製品については国が率先して調達するとともに、リサイクル材の利用に当たっての設備への支援を行うとされています。

プラスチック使用の合理化

使い捨てプラスチックストローやスプーンなど、ワンウエイプラスチックを提供する事業者に対して、ワンウエイプラスチックの削減のために取り組むべき判断基準を国が策定します。判断基準については、さまざまな物があり得るのですが、「レジ袋有料化」など、ワンウエイプラスチックの有料化もその手段の1つです。なお、国が策定した基準に著しく逸脱する場合、改善を促す勧告や命令などの措置があります。

プラスチック資源の循環利用について

プラスチックの排出段階では、高度な循環利用を実現するために3つの要点が提示されています。
1つ目は、市区町村が容器包装リサイクル法ルートを活用して、プラスチック資源の再商品化を促すとなっています。この部分では、再商品化事業者との連携促進による再商品化という仕掛けも見込まれています。
2つ目は、製造・販売事業者等による自主回収・再資源化の促進です。新法により「主務大臣が認定した場合に、認定事業者は廃棄物処理法の業許可が不要」となります。つまり、的確な回収・再資源化を実行する能力がある事業者については、規制緩和措置が適用されプラスチック資源のより高度な循環利用が可能になると予想されています。
3つ目に関しては、排出事業者にも排出抑制・再資源化の促進が求められるというポイントで、国が取り組むべき判断基準を策定するというものです。

まとめ

今回は、2022年施行予定のプラスチック資源循環促進法について、この法律によってプラスチックを取り巻く環境がどのように変わっていくのかについてご紹介しました。この法律が作られた背景は、非常に便利な素材であるプラスチックですが、適切に処理されないものが海にまで流出し、海洋汚染の原因となったり、海洋生物の命を危険にさらしてしまうなど、地球規模の環境問題の原因となっているからです。実際に、現在の海洋ゴミの内80%がプラスチックゴミだと言われており、微細化されたマイクロプラスチックを食べた魚を人間が食べることで、がんの発生や代謝性疾患の発症を引き起こすなど、健康被害の可能性まで指摘されています。

このような状況の中、EU諸国では「とにかくプラスチックの排出削減をする」という部分に重点を置いた対策がとられるようになっているのですが、日本では『リサイクル』が中心の対策がとられています。最近では、『バイオマスプラスチック』や『生分解性プラスチック』など、環境に優しいプラスチックなども登場していますので、こういった製品に切り替えていくことが今後の日本が進む道なのかもしれません。

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この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。