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投稿日:2021.11.26 
更新日:2022.09.26 

食品リサイクル法とは?食品関連企業ではどんな取り組みが行われている?

世界中で大量に排出される食品廃棄物が問題になる中、日本国内でも食品の廃棄に関する問題に直面しています。農林水産省が2020年に公表したデータでは、まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物、いわゆる『食品ロス』について、日本国内で1年間に排出される量だけでもなんと612万トンもの量になり、これは国民ひとりひとりが毎日お茶碗1杯分の食料を捨てているという状況です。さらに、FAO(国際連合食糧農業機関)は世界で毎年生産される食糧について、毎年食料生産量の1/3に当たる約13億トンが廃棄されていると発表しています。
日本では、少子高齢化などの問題により、人口減少が社会問題になっていますが、世界全体を見れば、人口は増加の一途をたどっており、このまま食品ロス問題を放置した場合、将来的な食糧危機に適切な対処がとれないとまで言われています。 このような中、日本では食品リサイクル法が制定され「食品廃棄物の発生を根本的に抑えて減量する」という目的のため、広く食品を取り扱う事業者を対象とする形で制定されています。しかし、この法律に関してどういったものかいまいち分かっていないという方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、食品関連事業者がおさえておくべき食品リサイクル法の基礎知識や実際の取り組みをご紹介します。
参考:農林水産省「食品ロスの現状を知る」より

食品リサイクル法とは

食品リサイクル法の正式名称は、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」で、1999年6月に制定された法律です。農林水産省の資料によると、この法律の趣旨は以下のように説明されています。

食品の売れ残りや食べ残しにより、又は食品の製造過程において大量に発生している食品廃棄物について、発生抑制と減量化により最終的に処分される量を減少させるとともに、飼料や肥料等の原材料として再生利用するため、食品関連事業者(製造、流通、外食等)による食品循環資源の再生利用等を促進する。 引用:食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律の概要

 

食品リサイクル法が制定された背景と目的

【背景】食品リサイクル法は、食品ロス問題が世界中で問題視され、大量消費・大量廃棄型社会から循環型社会への転換が急がれる状況の中、食品廃棄物などの排出を抑制することや資源としての有効活用を推進しなければならないということで制定されました。
そもそも食品ロスが発生してしまう場面は、人が食事する時だけではなく、製造から加工、販売などあらゆる場面で発生してしまいます。分かりやすい例でいえば、コンビニで販売されているおにぎりや弁当などの食品は、1秒でも賞味期限を過ぎれば「まだ食べられる食品」なのに関わらず、『廃棄』と呼ばれてバックヤードに下げられてしまいます。こういった食品の大量廃棄については「もったいない」という意識は誰もが持っていますし、なおかつ「廃棄する」こと自体にもコストがかかってしまい食品事業者にとってはダブルパンチのような状況になってしまいます。今でこそこういった食品の大量廃棄が問題視されるようになっていますが、食品リサイクル法が制定される以前は、大量の食品ロスが発生しているにもかかわらず、その実態すら十分に把握されることが無かったと言われています。
【目的】こうした中、世界中で地球環境保全や資源への負荷が問題視されるようになり、日本社会も大量消費・大量廃棄型社会から循環型モデルへと、社会の在り方自体を変容させる必要性が生じ、食品ロスの現状を正確に把握し、その発生を抑え、資源として有効活用するという目的で食品リサイクル法が成立しました。

食品リサイクル法の対象

ここでは、食品リサイクル法の対象となる食品廃棄物や事業者について簡単にご紹介しておきます。

まず、対象となる食品廃棄物についてですが、食品リサイクル法第二条で以下のように定義されています。
 

第二条 この法律において「食品」とは、飲食料品のうち医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品以外のものをいう。 2 この法律において「食品廃棄物等」とは、次に掲げる物品をいう。 一 食品が食用に供された後に、又は食用に供されずに廃棄されたもの 二 食品の製造、加工又は調理の過程において副次的に得られた物品のうち食用に供することができないもの 引用:e-Gov|食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律

上記からも分かるように、食品リサイクル法は、食品の売れ残りや食べ残しだけでなく、製造や加工、調理の過程で生じる食品クズなども対象にしています。ただし、家庭から排出される生ごみなどは対象としていません。

というのも、食品リサイクル法の対象となるのは「食品関連事業者」のみで、対象の事業者についても食品リサイクル法第二条で以下のように定義いるからです。

4 この法律において「食品関連事業者」とは、次に掲げる者をいう。 一 食品の製造、加工、卸売又は小売を業として行う者 二 飲食店業その他食事の提供を伴う事業として政令で定めるものを行う者 引用:e-Gov|食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律

もう少しわかりやすく言うと、「食品の製造、加工、卸売又は小売を業として行う者」が食品メーカーやスーパーマーケット、八百屋などを指しています。そして「飲食店業その他食事の提供を伴う事業として政令で定めるものを行う者」がレストランや食堂、飲食物を提供する宿泊施設や結婚式場などを指しています。 食品リサイクル法では、これらの食品関連事業者に、食品廃棄物などの発生抑制や再利用、減量などの取組を実施することを求めています。さらに、年間100トンを超える食品廃棄物が発生する事業者に対しては、再生利用の促進などを義務付けています。
 

食品事業者の取組について

それでは最後に、食品関連事業者の取組事例についても簡単にご紹介します。
 

イオングループの取り組み

総合スーパー「イオン」や「ダイエー」、食品スーパーの「マックスバリュ」などを展開するイオングループでは、食品廃棄物削減に向けた目標を以下のように掲げています。
 

イオングループ食品廃棄物削減目標 ■ 食品廃棄物を2025年までに半減
■「食品資源循環モデル」を2020年までに全国10カ所以上(対象1,000店舗以上)で構築
引用:プレスリリースより

この目標を達成するため、イオングループでは、「店舗や直営農場を拠点に、全国でイオン独⾃の循環モデルを構築」としています。店舗で、可能な限り食品廃棄物の削減の努力を行うのに並行して、どうしても避けられない食べ残しや売れ残り、調理くずなどの食品廃棄物を収集して肥料化、そして、その肥料を自社農場で利用して野菜を生産するという循環モデルを構築するとしています。

参考:プレスリリースより
 

ファミリーマートの取り組み

ファミリーマートでは、お弁当やおにぎり、総菜などの店舗から発生する食品廃棄物を生ゴミ回収リサイクルシステムにより飼料、肥料、メタンなどに再資源化するリサイクルループが構築されています。例えば、2008年には、以下のようなリサイクルループが完成しています。
 

2008年に東京都内、神奈川県内の店舗などから排出される食品残渣を回収し、飼料工場を持つ養豚場に効率的に運搬。その飼料で飼育した豚を使った弁当や惣菜パンを製造、販売する食品リサイクルループに取り組みました。 引用:ファミリーマート「食品ロスの削減」より

この取り組みは、店舗や食品製造工場から発生した食品廃棄物を、飼料製造業者が配合飼料と混合して液体飼料化するというものです。そして、この液体飼料を使って畜産農家が豚肉を生産し、その肉の一部をファミリーマートのお弁当などに加工するというものです。こういったリサイクルループは、2020年9月段階で、全国6地域で「再生利用事業計画」として認定されています。

参考:ファミリーマート公式サイトより

まとめ

今回は、食品リサイクル法がどういった法律で、実際に事業者はどういった事に取り組んでいるのかについて解説してきました。この記事でご紹介したように、食品リサイクル法は、食品ロスを減少させ、資源として再利用することを目的としている法律で、食品関連事業者にはさまざまな取り組みを実施することを求めているものです。

食品の製造過程では、どうしても発生する調理カスなどがありますが、そのまま捨てるのではなく、活用の方法を考えることがこの法律の趣旨と考えておけば良いのかもしれません。

この記事を書いた人

辻中敏

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。