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投稿日:2024.05.29 

コンタミネーションとは?対策事例も紹介

コンタミネーション
 
コンタミネーションとは、特に科学実験の場における異物混入や汚染を指す言葉で、「実験汚染」「実験室汚染」「試料汚染」などと訳されることがあります。食品製造業界では、主に異物混入を指す言葉として使われています。

どのような食品工場でも、コンタミネーションを防止するためにさまざまな対策を講じられています。当記事では、食品製造業界におけるコンタミネーションの詳細と、これを防止するための有効な対策について解説します。

食品工場におけるコンタミネーションとは?

食品工場など、食品製造業界におけるコンタミネーションは、和訳すると「汚染」を意味し、科学実験における雑菌や異物の混入、食品加工におけるアレルギー物質の混入などを指しています。厚生労働省のウェブサイトでは、以下のように解説されています。

(コンタミネーション)
コンタミネーションとは、食品を生産する際に、原材料として使用していないにもかかわらず、アレルギー物質が微量混入してしまう場合をいう。
引用:厚生労働省サイトより

コンタミネーションは、本来、製造する食品に含まれるべきでない異物や微生物、薬品、原材料としては使用していないはずの食品など、さまざまなものが意図せず食品に混入することを指しています。そのため、食品におけるコンタミネーション対策では、異物や微生物だけでなく、意図しない食材の混入を防止することが重要とされています。

食品工場で製造する製品は、原材料として記載する食材以外、全てが異物であり、それらの混入はコンタミネーションにあたります。
意図しない食材の混入は、食物アレルギーによる食品事故の可能性があるからです。食物アレルギーは、摂取した食材が原因となり、人体の免疫学的反応により、何らかの症状が現れる現象のことをいいますが、アレルギー症状を持つ人がその対象となる食物を喫食した際、最悪の場合、死に至ることもあるとされています。したがって、食物アレルギーをもたらす主な食物アレルゲンは、食品として販売する際、表示に記載することが義務付けられています。食物アレルゲンには、当初特定原材料として8品目が指定されていましたが、現在は「特定原材料に準ずるもの」として20品目が追加されています。食品表示に関わる食物アレルゲンの取り扱いについては、以下のようなルールが設けられています。
 
特定原材料等
引用:消費者庁資料より

上記の食材を使用していない食品の場合、当然、表示に記載することはありません。しかし、製造工程のどこかでこれらの特定原材料が混入していた場合、それを口にした人にアレルギー症状が出る可能性があります。したがって、食品工場などの食品製造現場では、コンタミネーションが起こらないように徹底した対策が求められます。

※木の実系の食物アレルギーが増加傾向にある
【植物アレルギーの実態】即時型症例の原因食物の内訳

近年の食物アレルギーの傾向としては、くるみや落花生など木の実系が増加傾向にあります。

コンタミネーションの原因とは?

食品工場におけるコンタミネーションは、以下のような原因が考えられます。

  • 生物的原因
    生物的原因は、食品中に微生物が繁殖し、汚染を引き起こすことです。例えば、サルモネラやノロウイルスなどによる食中毒があげられます。また、食品を腐敗させる雑菌類も生物的原因の一つです。
  • 化学的原因
    化学的原因は、農薬や化学添加物、汚染物質などが考えられます。例えば、栽培時に使用された農薬が残留物として食品に含まれる、食品の保存や加工を目的に使用された化学添加物が摂取され、健康被害を引き起こすなどです。
  • 物理的原因
    製造機械の破損などにより、食品に金属片やガラス片などが混入するケースが物理的原因です。
  • 人為的原因
    人為的原因としては、作業員の手や衣服に微生物や異物が付着していて、それが食品中に混入するケースなどが考えられます。また、作業場所や設備の清掃を怠って、異なる食品の原材料が混入することも考えられます。

次項で、食品工場に必要なコンタミネーション防止のための対策をご紹介します。

コンタミネーションを防止するための対策とは?

食品工場でのコンタミネーションは、アレルギーを持つ消費者の命にも関わる非常に重大な問題です。ここでは、食品の製造において、アレルギー物質のコンタミネーションを防止するための対策をご紹介します。

原料の管理を徹底する

食品工場におけるコンタミネーションを防止するためには、原材料の管理の徹底が非常に重要です。なぜなら、原材料にアレルギー物質が混入していれば、食品工場の中や製造工程でいくら対策をしても意味がなくなるからです。

原材料の管理については、アレルゲン別に保管場所を変える、粉物の保管は、空気中を舞って他の食材に混入する恐れがあるため、床に近い場所で保管する、他のものと十分に間隔を置いて保管するなどの対策が必要です。

また、原材料の受け入れ時に、袋が破れているものは搬入しないようにするなどの対策も有効です。

製造方法の見直しを行う

一昔前までの食品工場では、隣り合う製造ラインや作業台で別の製品を作ることもそれほど珍しくありませんでした。また、製造数を調整するため、同じ製造ラインで、時間帯ごとに別の製品を作ることもありますが、この場合はコンタミネーションが発生しやすくなります。例えば、そば粉を使った製品を製造した後、同じラインで小麦粉を使った製品を作る場合、製造ラインの洗浄が不十分で、小麦製品にそば粉が混入する可能性があります。粉や水分などは、丁寧に洗浄したつもりでも、完全に取り除くことが難しく、コンタミネーションが起きてしまう可能性が高いです。

食品工場で、コンタミネーションを防止するには、「同じラインで製造する場合は、同じ原材料を使う製品に限る」「隣り合う作業台は、同じ原材料を使う製品に限る」など、意図しない食材の混入が起こりにくくなるように、製造方法を見直す必要があります。

可能な限り専用の調理器具を使う

食品工場の中には、複数の食品を製造している施設が多いです。しかし、製造する食品ごとに専用の調理器具を使用せず使いまわす場合、コンタミネーションが起きる可能性が高くなります。食品が変わるたびに洗浄するルールがあっても、洗浄が不十分であれば混入が起きる可能性があります。

したがって、複数の製品を製造する食品工場では、同一の調理器具を使いまわすのではなく、専用の調理器具を用意し、色分けするなどして使い分けるようにしましょう。

従業員の教育を徹底する

原材料の管理や製造現場の整理を行うだけでなく、実際に作業を行う従業員に対して、コンタミネーション防止のための教育を行うことも大切です。

コンタミネーションを防止するためには、作業中の服装や作業手順をしっかりとマニュアル化し、それを順守するように教育を行う必要があります。また、食物アレルギーに対して何の知識もないまま作業させてしまうと、調理器具を分けている理由などを理解せず、同一の器具を使って別の製品を作る、原料を間違えて混入させてしまうといった事故の危険性が高くなります。したがって、コンタミネーションのリスクや対策について、事前にしっかりと指導したうえで作業に入らせるようにしましょう。

食品表示による対策

十分な対策を行ってもコンタミネーションの可能性を完全に排除できない場合もあります。この場合、消費者庁では、製品の表示に注意喚起の記載を推奨しています。例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 工場内でアレルギーの原因となる食材を使用するため、混入の可能性を完全に排除できない場合
    同じ製造ライン、または工場内で作る別の製品にアレルギーの原因となる食材を使用する場合です。例えば、同じ機械を使って、乳製品が入ったクッキーと、アレルギー対応食の「乳製品なし」のクッキーを作るなどのケースが考えられます。この場合、「本品製造工場では○○(特定原材料等の名称)を含む製品を生産しています。」といった表示が推奨されます。
  • 原材料の採取方法によって意図しない食材の混入が考えられる場合
    特に、水産物を原材料とする製品の場合、原材料を採取する際に他の食材が混入し、そのまま製品に混ざる可能性があります。例えば、いりこを採取するときに、小さなカニやエビが混ざって、食品加工の工程においても、微細なものを完全に排除しきれない可能性があるといったケースです。この場合、「本製品で使用しているいりこは「かに」が混ざる漁法で採取しています。」などの表示が推奨されます。
  • 原材料がエビやカニを捕食することで混入する可能性がある場合
    特に水産物の中でも魚などは、採取する以前にエビやカニを摂取していることがあり、それを原材料としている製品に混入する可能性があります。例えば、かまぼこやちくわ、はんぺんなど、魚肉加工品は、原材料となる魚がエビやカニを食べている可能性があります。この場合、「本品(かまぼこ)に使用しているタラはエビを食べています」といった表示が推奨されます。

上記のような、コンタミネーション対策の徹底を図ったとしても、その可能性を完全に排除することができない場合、「アレルゲンが混入している可能性がある」ことに対し、「注意喚起表示」をすることを消費者庁が推奨しています。

原材料として特定原材料等を使用していない食品を製造等する場合であっても、製造工程上の問題等によりコンタミネーションが発生することがあります。他の製品の特定原材料等が製造ライン上で混入しないよう十分に洗浄するなどの対策の実施を徹底することが原則ですが、これらの対策の徹底を図ってもなおコンタミネーションの可能性が排除できない場合については、注意喚起表示を推奨しています。
例:「本品製造工場では○○(特定原材料等の名称)を含む製品を生産しています。」
引用:消費者庁資料より

まとめ

コンタミネーションは、食品製造現場のさまざまな場所にリスクが潜んでいるため、防止策の徹底が非常に重要になります。

食品への異物混入は、さまざまな技術が飛躍的に進化している現在でも、完全に防ぐことは難しいとされています。実際に、つい先日も、健康維持を目的に口にするサプリメントによる健康被害が発生しており、製造メーカーからは「意図しない成分が検出された」と発表されています。サプリメントから、意図しない成分が検出された原因はまだ明らかになってはいませんが、製造工程のどこかでカビが混ざったのではないかなどの専門家の指摘も聞こえてきています。

食品への異物混入は、人の命に係わる重大事故に発展する可能性があるため、混入が起きにくい環境作りがますます求められるようになっています。

食品アレルゲンに対応するために、製造ラインの改修や導線の改善などをご検討の方は食品工場建設・改修の実績豊富なFACTASへご相談ください。ニーズに合わせたご提案で、食品事業の付加価値及び生産性の向上に貢献します。

この記事を書いた人

sande

安藤 知広

FACTASブランドマネージャー
執行役員東京本店長

1994年当社入社、工事管理者として工場建設における問題と多くの事例を経験。
2013年から東京本店次長として数多くの食品工場建設のプロジェクトリーダーを務める。
2018年10月ファクタスブランドマネージャーに就任し、食品工場建設における技術の体系化を進めております。