
食品工場の火災対策では、設備の設置だけでなく、日常点検・従業員教育・法令対応まで含めた防火管理の徹底が不可欠です。
工場火災は一度発生すると、操業停止や取引停止など、企業経営に大きな影響を及ぼします。そのため、事前の対策と管理体制の構築が極めて重要です。
本記事では、食品工場における防火対策の基本、火災原因別の対策、実務で使えるチェックリストについて分かりやすく解説します。
Contents
工場火災の主な原因とその対策
過去に国内で発生した工場火災の事例をもとに、火災原因とその対策、また、どのような防火管理が求められていたのかを解説します。
漏電による火災
食品工場では、製品を製造するための機械の他、冷蔵・冷凍設備、照明に空調設備など、さまざまな電気設備が稼働しています。これらの電気設備の配線不良や劣化が原因で漏電し、工場火災に発展するケースが非常に多く見られます。
漏電による火災の事例
2021年7月北九州市で発生した工場火災では、天井裏の被覆配線で漏電が起こったことが原因と推測されています。どのような建物でも、天井裏などを利用して配線工事が行われていますが、普段は目にすることができない場所となるので、ケーブルの劣化などに気付くことができず、漏電が放置されてしまいます。そして、目に見えない箇所での漏電から火災に至ってしまうのです。
こういった火災事故を防ぐためには、定期的に電気関係の点検を行うことや、万一火災が発生しても、早期に気付くことができるよう、天井裏など目に見えない位置にも感知器を設置するなどの防火管理が重要です。
放火や過失による火災
工場火災の中には、人が原因となっているケースも多いです。例えば、従業員が休憩する際にタバコなどを吸う場合、このタバコの不始末で火災に発展したり、製造機械の操作ミスなどによって出火してしまうケースが考えられます。また、人が引き起こす工場火災では、外部の人間に放火されてしまうといったケースも考えられます。
放火や過失による火災の事例
食品工場の事例ではありませんが、2021年11月に発生した大阪市此花区の物流倉庫火災は、この倉庫で働いていた従業員が段ボールに火をつけたことから、約5万3000平方メートルの倉庫を全焼させてしまうほどの大規模火災に発展しています。なお、タバコの不始末に関しては、喫煙者が減少している中でも令和2年(1~12月)に発生した火災の約9%(3,104件)を占めているなど、現在でも火災の出火原因の上位に位置します。
こういった人為的な火災については、従業員全体に防火管理の趣旨を十分理解させるということが重要です。消防設備などを整備していたとしても、それを扱う人に防火の意識が無ければ、火災を防ぐことはできないでしょう。したがって、タバコは近くに可燃物が無い特定の場所のみで許可するなど、放火の危険性を低減するため、第三者に見える位置に可燃物を放置しないなどの対策を徹底しましょう。
参照データ:令和2年(1~12月)における火災の状況
工場特有の原因による火災
工場火災は、生産活動によって発生する可燃性ガスや水蒸気、粉塵などに引火し、大規模な火災に発展するといったケースも少なくありません。
工場特有の原因による火災の事例
2022年2月に発生した製菓工場の火災は、お菓子のカスに引火した可能性が最も高いと報じられています。この事例以外にも、工場の中には、製造工程で可燃性ガスや可燃性の液体が蒸発した水蒸気が放出され、これに電気火花や高温の物体が接触することで、出火・爆発につながってしまったなどと言う事例が多く存在します。
工場では、製造工程の一部で火災の危険性が急激に増すケースなどもありますので、それぞれの施設がどのような危険性があるのかをしっかりと認識し、対策を施す必要があります。さらに、前述した製菓工場の火災では、防火シャッターの前で逃げ遅れたとみられる従業員が倒れているのも見つかっています。これは、アルバイトなどへの避難訓練を怠っていて、火災発生時に的確な行動を即座に取ることができなかったことが原因だと指摘されています。
工場の火災対策のポイント
工場で火災が発生すると、人的被害や設備被害が大きく、事業継続にも深刻な影響を与えます。ここでは、火災のリスクを減らすために日常的に実施すべき具体的な対策を解説します。
工場火災の初期消火の重要性
火災は発生から数分で大規模化することもあります。被害を最小限に抑えるためには、初期段階での迅速な消火活動が鍵となります。
- 消火器や消火栓を適切な場所に設置し、誰でも操作できる状態を維持する
- 初期消火用の設備の点検や整備を定期的に行う
- 従業員に消火器の使い方や消火手順を周知する
消防設備の設置による対策
消防設備は、火災の予防と被害の最小化に欠かせません。法令に基づいた設置に加え、適切な維持管理が重要です。
- スプリンクラーや消火器、消火栓を施設規模に応じて設置
- 防火シャッターや防火扉の動作確認を定期的に行う
- 警報設備や煙感知器の作動確認とメンテナンス
清掃・整理整頓による日常的な対策
日常的な清掃や整理整頓は、火災対策の最も基本的なポイントです。可燃物の蓄積を防ぐことで、火災の発生リスクを大幅に低減できます。
- 作業場や機械周辺のゴミ・ほこりを定期的に清掃
- 油分や粉塵の堆積を防ぐ
- 可燃物は所定の場所に保管し、通路や消火設備周りには置かない
従業員への避難訓練や安全教育による対策
設備や設備管理だけでは火災リスクを完全に防ぐことはできません。火災発生時、従業員の対応能力が被害の大小を決定します。
- 避難経路の確認と訓練の実施
- 消火器や消火栓の使用方法教育
- 火災の危険性や防火管理の意識向上教育
BCP対策の策定
火災などの災害発生時に事業を継続するためには、BCP(事業継続計画)の策定が不可欠です。
- 火災発生時の業務優先順位や代替拠点の設定
- データや重要書類のバックアップ体制の確保
- 従業員へのBCP内容の周知
防火管理の基礎知識について
そもそも防火管理とは何なのかという点についてご紹介しておきます。『防火』については、文字通り「火災を防ぐこと」を指していますが、防火管理となると、以下のような意味を持つとされています。ここでは、埼玉東部消防組合の公式サイトで紹介されている防火管理の解説を引用しておきます。
防火管理とは
「防火管理」とは、火災の発生を未然に防止し、かつ万一火災が発生した場合には、被害を最小限度に止めるために必要な対策を立てることです。そこで重要になるのが「自分のところは自分で守る」という自主防火管理の原則です。
過去の災害を振り返ると、防火管理を怠っていたことにより死傷者を伴う火災が発生した場合は、刑事上、民事上の責任が問われることがあり、管理権原者に求められる防火管理責任は非常に重いものです。
悲惨な火災を起こさないためにも、「法律で定められているから仕方なく行う」という気持ちではなく、防火管理の趣旨を十分理解して、あなたの事業所でも防火管理体制を充実させ、いざという時に適切な行動がとれるようにすることが不可欠です。
引用:埼玉東部消防組合
これからも分かるように、防火管理は、火災を未然に防ぐための対策を施すだけでなく、万一火災が発生したとしても、その被害を最小限に止めるために必要な措置を行っていくことを指しています。食品工場などの大規模施設では、警報設備・避難設備・消火設備など、各種消防設備の設置が義務付けられていますが、単に消防設備を設置したというだけでは意味がありません。こういった設備に関しては、機器が正常に作動しているのか普段からチェックを行い、万一の際にきちんと使えるように従業員などに設置場所や使い方を周知しなければ、被害を最小限に止めることはできないでしょう。
それでは、食品工場における防火管理については、どのようなことを行っておけば良いのでしょうか?
食品工場における防火管理とチェックリスト
それでは、食品工場における防火管理について、実際どのような管理が必要なのかについて、そのポイントをご紹介しておきます。食品工場などの大規模施設は、多くの人員が働くことになることから、万一の際も人命を守ることができるように、さまざまな消防設備の設置が義務付けられています。ただ、施設に導入されている消防設備について、万一の際に即座に利用できるような状態になっていない…などと言うケースも少なくないと言われています。
食品工場の防火管理では、以下のようなポイントを普段からチェックしておく必要があります。なお、工場や倉庫などの大規模施設に導入される消防設備については、弊社のRiSOKO公式サイトでご紹介していますので、そちらもご参照ください。
関連:RiSOKO「工場や倉庫の安全対策!従業員を守る「消防設備の基本」を解説」
- 消火栓の置き場を分かりやすく明示する
- 消火栓扉の前に、物を何も置かず、扉がスムーズに開くようにする
- 施設規模に見合う充分な数の消火器を用意する
- 消火栓・消火器の場所および使い方を従業員に周知する
- 防火シャッター・扉について、定期的に動作確認を行う
- 防火シャッター・扉がスムーズに開閉するよう付近に物を置かない
- 施設内の電気関係の点検を定期的に行う。また、点検結果に対する対処も行う
- 機械設備の点検・整備を行う
- 万一の際の避難経路が確保されていて、それを従業員に周知する
- 非常口の前に物を置かない
- 警報設備関係がきちんと作動するか定期的に点検を行う
食品工場での防火管理は、上記のような対策を徹底しなければいけません。防火管理は、単に火災を防ぐためのものではなく、万一の際に火災による被害を最小限に留めるための施策も非常に重要です。例えば、消火器などの消防設備が整っていたとしても、従業員が機器の使い方を知らなければ、初期消火が遅れてしまい、被害の拡大を止めることはできません。
まとめ
今回は、食品工場における火災の主な原因や実際に発生した火災事例を踏まえ、必要な火災対策・防火管理について解説しました。食品工場には、電気設備の不具合、可燃物や粉塵・油分の蓄積、人為的ミスなど、日常の業務の中に多くの火災リスクが潜んでいます。火災を未然に防ぎ、万一火災が発生した場合でも、その被害を最小限にとどめるため、必要な対策を講じることが重要です。
例えば、火災報知機や消火栓、消火器や防火シャッターなど、工場などの多数の人間が働く施設では、さまざまな消防設備の設置が義務付けられています。ただ、こういった設備に関して、「法令で決められているから仕方なく設置する」と言った考えを持つのではなく、「自分は自分で守る」と言う防火管理の趣旨を従業員全体で共有することが非常に重要になると考えてください。
上述した過去の火災事例でも、避難訓練を怠っていたことで、従業員が逃げ遅れてしまい、命を失ってしまったという悲惨な結果を招いています。防火管理は、工場そのものを火災から守るためだけのものではなく、そこで働く従業員の命を守るためにも非常に大切な対策になります。常日頃から、防火管理の意識を強く持つことで、火災の発生確率を極限まで下げ、万一の際も悲惨な事故を防ぐことができるようになると思います。
